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ボールが収まる大迫のありがたさ。
“正しい競争”でハリルJは甦った! 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/11/16 11:30

ボールが収まる大迫のありがたさ。“正しい競争”でハリルJは甦った!<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

前線で大迫勇也が発揮した「収める力」は攻撃の厚みを大きく向上させた。ここから振り向いてシュートを狙えるのも彼の武器である。

大迫が前線でボールを収めることから攻撃が始まる。

 攻撃の「らしさ」を取り戻すきっかけは、オマーン戦でつかんでいた。中長距離のパスでアタッカー陣を走らせるのではなく、1トップの大迫をターゲットとすることで、連動性のある攻撃が実現されていたのである。

 大迫はサウジ戦でもしっかりとボールを収め、2列目はもちろん、サイドバックの攻撃参加も引き出した。ゴールこそ奪えなかったものの、1対1の局面ではタフに戦い続けた。勝利の立役者といっていいパフォーマンスである。

 攻撃の変化を示すものとして、80分の2点目は分かりやすい。

 最終予選初出場となった左サイドバックの長友佑都が、後半から久保に代わった本田との連携で左サイドを破り、グラウンダーのクロスをゴール前へ供給する。ペナルティエリア内には1トップの大迫だけでなく、64分に清武と交代出場した香川、オマーン戦から効果的な飛び出しを見せてきたボランチの山口蛍、それに原口元気がいた。

 右サイドバックの酒井宏樹も、ペナルティアークまで侵入している。個の頑張りを前提としたタテに速いサッカーでは、これほどの厚みは生み出せない。

タテとコンビネーションの使い分けが大切。

 タテに速いサッカーが悪いわけではない。それは、コンビネーションという「らしさ」を消された場合の打開策になる。パスサッカーの追求が度を過ぎると、ブラジルW杯の二の舞となってしまう。

 大切なのは使い分けである。2つの攻撃パターンを織り交ぜることで、それぞれの良さを際立たせていくのだ。どのようにゴールするのかではなく、ゴールを奪うことを最優先すれば、そもそも使い分けに悩むことはない。手段と目的が整理された意味でも、サウジ戦は今後につながっていく。

 前半終了間際の45分に生まれた先制点は、サウジのハンドで得たPKだった。敵将ファンマルバイクが「正直に言って疑いを抱いている」と話したように、立場を変えれば微妙なジャッジだったとも言える。序盤から主導権を握ることはできていただけに、前半のもっと早い時間帯に先制点を、それも流れのなかから決めなければならなかったのは事実だ。

【次ページ】 自分が決める、止める、という意識が見えた。

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