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モウリーニョはまだスペシャルか。
マンU監督はモイーズが比較の基準。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2016/11/05 17:00

モウリーニョはまだスペシャルか。マンU監督はモイーズが比較の基準。<Number Web> photograph by Getty Images

じりじりと順位を下げ、EL圏内からも引き離されつつあるマンU。今季の上位は順当な顔ぶれなだけに、失速は期待しづらいが……。

イブラのシュートが劣化しているわけではないが。

 だが35歳のベテランFWは、シュートの精度が劣化してしまっているわけではない。ストーク戦でのマンオブザマッチは相手GKのグラント。バーンリー戦でも、11セーブと当たっていたトム・ヒートンの選出が妥当だろう。60分過ぎにイブラヒモビッチが放った強烈なジャンピングボレーも、両手両足を大きく広げた“スタージャンプ”でヒートンに弾かれた。

 続くループ状のヘディングシュートが惜しくもバーに阻まれたイブラヒモビッチは、いい動きでチャンスに絡んでいた。マタのスルーパスに走り込み、背後のチャンスメイカーの他にも、中盤から上がってきたポグバや、後半に2トップを組んだマーカス・ラッシュフォードとワンツーを成功させている。前述のボレーかヘディングで6試合ぶりのリーグ戦ゴールさえ生まれていれば、既に気分的に吹っ切れていたはずのフルタイム直前に訪れたチャンスでも、ポグバのクロスに出した右足が、バーの上ではなくゴール天井へとボールを飛ばしていたことだろう。

モウリーニョも精神的に吹っ切れずにいる。

 精神面の吹っ切れなさは、開幕当初の白星街道にチームを戻せずにいるモウリーニョも同様だ。

 バーンリー戦の後半にエレーラが不運にも2枚目のイエローをもらって退場を命じられると、モウリーニョはマタをベンチに下げて、フィジカルを押し出したプレーを得意とするフェライニを投入した。10人で戦わなければならない時間は20分ほど残されていたとはいえ、格下を圧倒していただけに、これは慎重になりすぎだろう。

 7度のチャンスメイクの他にポストを叩いたシュートで自らゴールにも迫っていたマタをピッチに残し、ホームで勝ちにいく姿勢を貫いても良かったと思われる。

 対照的にアウェイでの強豪対決で手堅くいった8節リバプール戦では、狙い通り確実に1ポイントを奪えていた(0-0)。その戦いぶりは、メディアで「ビッグゲームで結果を手にするモウリーニョらしい」と評価されてもいた。

 続く敵地でのチェルシー戦でも、2列目両サイドが2人目のSBのように深い位置を取る、事実上の「6バック」でポイントをもぎ取るつもりのようだった。しかし、当人が「普通は0-0から始まるが、この試合は0-1で始まった」と語ったように、チームがキックオフ30秒後に守備のミスで先制を許し、20分後にも緩い守りで追加点を与えてしまっては、戦前のプランも何もあったものではない。

【次ページ】 彼に限って、パニックになどならないはずだ。

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