黒田の最後を美しく飾ったのは……大谷だった。

　第3戦、足が震えるほどの状態だった黒田は大谷の打席まで投げ終えてから「異変」をベンチに告げた。

　黒田が最後に投げた相手は大谷だった。

　もしかしたら……。いや、きっと、予感していのだろう。これが、自分にとって最後の打者になるかもしれない、と。だから、力を振り絞ったのだろう。後から振り返れば、そのシーンは黒田が自分につくった「花道」だったように思う。

　最後まで儀式を拒み、戦闘服で貫いた黒田に、一瞬だけ「タキシード」を着せたのは大谷だった。

　伝説の終わりと始まり。

　それを目撃できたから、このシリーズは特別だったのだろう。