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SVホルンとAbemaTVの奇妙なタッグ。
現代人の“推し”になるという挑戦。 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byAFLO

posted2016/11/04 16:40

SVホルンとAbemaTVの奇妙なタッグ。現代人の“推し”になるという挑戦。<Number Web> photograph by AFLO

ホルンには浦和ユース出身の矢島倫太郎(写真)や、ハーフナー・マイクの弟ニッキらも所属している。

スポーツの放映権料は高いが、ホルンは大チャンス。

 メディア界では、新興勢力の組織である。今はとにかく失敗を恐れずに、チャレンジとトライを優先する風が社内には吹く。本田が実質オーナーとはいえ、オーストリア2部という普通の日本人が興味を持つことはないであろう試合を中継する。それを彼らは微塵もリスクと感じていないようだ。

「リスクというのは投資が回収できなかったり、費用対効果が少なかったりということだと思うんですけど、実際現在のスポーツ界の放映権料はものすごく高額になっています。場合によっては地上波放送よりも、インターネット配信の方が高額ということもあります。我々の立場としては、今スポーツはチャレンジしにくい環境であることは間違いないです。

 ただ今回は、まだほとんど誰も手をつけていないホルンをAbemaTV独自のコンテンツに育てていけるチャンスでもありました。リスクという意味では、本田選手の方がよっぽどある気がします(笑)。でも、本田選手のチャレンジの姿勢に何より共感しますし、今の私たちもトライして、目があればすぐに勝負という意識をスタッフ全員で共有しています。だからホルンを放送し始めるにあたって、社内で反対する人間は誰一人いませんでした」

 本田が常々口にする「時間は有限」や「スピード感を持って勝負する」というフレーズ。即断即決が今のところ経営者・本田の特徴であるが、進境著しいAbemaTVもその速度感は同じようである。ある意味余計なしがらみがなく、速さとチャレンジの先に成功を掲げる両者であるからこそ、今回の共鳴につながったと言えるだろう。

とはいえ、本田がホルンでプレーするわけではない。

 もちろん、AbemaTVもその他のスポンサー同様、本田圭佑の世間的影響力や価値がホルンとのビジネスのきっかけになった。あまりインタビューを多くは受けない本田だが、テレビ朝日のスタッフによる熱心な交渉により、何度か同局の取材に応じた過去がある。そんな“親局”の押しもあって、“子局”が今回の中継をする下地ができたことは間違いない。

 しかし、本田が実際にホルンでプレーするわけではない。ならば今後のホルン中継の発展を考えると、どうしても視聴者の興味を惹くその他の切り口を見つけなければならない。ホルンは本田が経営するクラブではあるが、チームの直接的魅力に本田が関わり合うことはないのだ。

【次ページ】 選手への“推し”、そしてビジネスや文化の話まで。

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