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最高の錦織圭は「波のない湖面」。
ツォンガ戦敗因はギラギラの欠如? 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byAFLO

posted2016/11/04 11:40

最高の錦織圭は「波のない湖面」。ツォンガ戦敗因はギラギラの欠如?<Number Web> photograph by AFLO

最新のランキングで、ツォンガは世界13位。決して弱い相手ではないが、錦織圭にとっては残念な敗退となった。

集中している時の錦織は、波のない湖面のよう。

 第2セットは落としても最後は錦織、と見ていたが、第3セットは5-3と王手をかけながら、2度のマッチポイントを逃し、追いつかれた。相手のボールがネットインするなど、ツキにも見放された。一度失った勢いはタイブレークでも取り戻せなかった。

 錦織は時々、雄叫びを上げ、自分を奮い立たせた。しかし、本来の高度に集中した状態をつくり出せているようには見えなかった。

 極限まで集中した錦織を見て連想するのは、少しも波のない静かな湖面だ。無音、無風で鏡面と化した湖のごとく平静な精神状態で、相手とボールを凝視するのが、彼の本来の姿だと思っている。しかし、この試合ではそんな連想が働かなかった。

ファイナルズ進出を決めていることが不利に働いた?

 うまく試合を運べなかった要因は、1つではないだろう。

 大会への準備時間が短かったため、コートサーフェスの特性を把握しきれず、大会の使用球にも違和感を持っていた。初戦の2回戦のあと、錦織はこんな話をしている。

「なかなかコントロールができなかったり、思いきり打つと変な所に行っちゃうので、ちょっと制限しながらというか、我慢しながらプレーしないといけないと思います」

 敗退した試合を「昨日よりは感覚は全然よかった」と振り返ったが、「場面場面で消極的になった」ことはボールへの違和感と無関係ではないはずだ。

 受け身の場面が多かったとはいえ、錦織自身、プレーが単調だった。精神的な疲労が残り、アイディアが沸いてこなかったのかもしれない。

 最も気になったのは、ギラギラしたものが感じられなかったことだ。

 前週の疲れが残る中での連戦、しかもツォンガとは対照的に、すでにツアー・ファイナルズ出場を決めていたことが、この大会へのモチベーションを難しくしていたはずだ。

「ロンドン(=ツアー・ファイナルズ)が懸かっていない分、リラックスして臨んでいましたが、ここで上に勝ち進めれば4位で(シーズンを)終われる可能性も増えていたので、それだけでしたね」

【次ページ】 来週末には、すぐにファイナルズが開幕する。

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