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ライバルは“韓国のメッシ”イ・スンウ。
U-19代表・堂安律が目指す世界基準。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph byAFLO

posted2016/10/27 11:00

ライバルは“韓国のメッシ”イ・スンウ。U-19代表・堂安律が目指す世界基準。<Number Web> photograph by AFLO

堂安が目指すのは「チームを勝たせる選手」。バルサのカンテラ育ちで3つ年下の久保建英のことも強烈に意識するという。

強烈な決意が、逆に心と体にギャップを生んだ。

 ずっと頭の中に残っている残像。

 彼はその残像を鮮明に持ち続け、“倒さなければならないライバル”として、自らを高める起爆剤としてきた。だからこそ、彼に成長した自分の姿を見せつけるためには、何が何でもU-20W杯の舞台に立たなければならなかった(※来年の開催地が韓国のため、ホスト国として出場が決まっており、かつイ・スンウはAFCU-19選手権の韓国代表メンバーに入っていない)。

 もちろんそれだけでなく、“行かなければならない場所”と位置づける海外に向けても、U-20W杯に出ることは彼の中でも必須だった。

「僕はこのチームの中心だと思うので、自分が勝たせないといけないという思いは強いし、自分がやらないといけないと思っています」

 強烈な自覚と決意は、逆に心と身体のギャップを生み出してしまったようだ。

 自分のプレーを出そうとするあまり、気持ちがはやり、ミスを招く。そのミスを取り返そうとして、またミスを招く。噛み合わない心と身体。グループリーグの時点では、その悪循環に陥ってしまっていた。

「緊張感ある舞台を楽しみながらプレーすれば……」

 チームメイトの奮闘もあり、グループリーグは無敗の1位通過を果たしたが、小川、岩崎、三好とアタッカー陣が次々とゴールを決める中で、堂安は1ゴールも決めることが出来なかった。

 だが、堂安は大一番となる準々決勝の前に、自らの力で階段を上がっていたようだ。

 その前日練習後に、彼はこう口にしていたのだ。

「もちろんチームに貢献出来ていなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいです。でも、今はワクワクしているんです。次勝てばU-20W杯に行ける。僕はずっとこの日を待っていたんです。これまでの出来を引きずらずに、緊張感ある舞台を楽しみながらプレーすれば、きっと自分らしさが出ると思います」

 もがき苦しんだ先に待っていたのは、雑念を捨て自分を信じること。

 決戦に向けて、心の底から湧き上がる高揚感とモチベーションに自分の身を任せることで、必ず結果が生まれる。

 いい意味で開き直った彼からは、力みが取れていた。それが1得点1アシストを決めた、「ナチュラルなキックフォーム」に繋がっていた。この目に見える結果だけではなく、この日の彼は守備面でも素早い帰陣と強烈なプレスバック、前からのプレスを見せ、ハードワークを厭わなかった。

【次ページ】 いざ、イ・スンウが待つ、来年5月のU-20 W杯へ!

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