プロ野球亭日乗BACK NUMBER
広島が石原慶幸の力で奪った2勝。
短期決戦の要は、捕手の「対応力」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/10/24 16:30
捕手としての能力が石原慶幸は極めて高い。打率2割でも緒方監督が使いたくなる理由がそこにはあるのだ。
第1戦でレアードの能力を見極めたカープ。
広島にとってこのシリーズのカギの1つはパ・リーグの本塁打王、ブランドン・レアードをいかに抑え込むかだった。栗山英樹監督がわざわざ二刀流の大谷翔平を8番に置いたのも、前を打つ7番のレアードを生かすことも目的の一つだ。後ろに大谷がいることでレアードと勝負をせざるを得ない状況を作り、そこでこの助っ人の長打力を生かそうという思惑があるからだった。
第1戦ではその思惑通りに、広島先発のクリス・ジョンソンの前に日本ハム打線が苦しむ中で、ただ1人レアードだけは2安打1本塁打と気を吐く結果となった。4回の中前安打も7回のバックスクリーン弾も、いずれも甘く入った真ん中、やや外寄りのストレートを打たれた。しっかりと踏み込まれて痛打された結果だった。
ところが第2戦になると、得点圏に走者を置いた第1打席は低め中心の配球だったが、無死一塁で迎えた4回の第2打席では、2球目にインハイのシュートなど立て続けに内角球を使って右飛に、第3打席は変化球で追い込むと最後も外に逃げる変化球で空振り三振に仕留めた。第2打席できっちり内角を使った効果がここでも出ているわけである。
エルドレッドの内角を攻め切れなかった日本ハム。
これと対照的だったのが日本ハムバッテリーの広島、ブラッド・エルドレッドへの攻めだった。
エルドレッドは初戦の4回と第2戦の6回にいずれもストレートを叩いて2本塁打を放った。大谷から放った本塁打は外角低めの腕が目一杯に伸びるところのボールで、第2戦は0-2と追い込んで高めにウエスト気味に投げた球が甘くなったところを痛打された。
ただ、テレビの解説で広島OBの達川光男さんも指摘していたが、セ・リーグの多くのチームの対エルドレッドの鉄則は、インコースをいかに使って踏み込ませないかである。ところが第1戦の大谷が打たれても、第2戦の増井浩俊と組んだ捕手の大野奨太は、第2戦の第1打席でインハイの真っ直ぐを詰まりながら左前安打されると、その後は再び外角中心の組み立てに戻ってしまっている。
変われなかった大野と、初戦を踏まえて変化した石原。その差が広島連勝の1つの勝負の分かれ道になったとも言えるだろう。