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巨人、阪神だって決して悪くない!
全球団が60点以上の豊作ドラフト。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byKyodo News

posted2016/10/21 20:00

巨人、阪神だって決して悪くない!全球団が60点以上の豊作ドラフト。<Number Web> photograph by Kyodo News

一時は12球団指名も、と騒がれた田中正義はソフトバンクへ。昨年の高橋純平に続き工藤監督がくじ運の強さを発揮した。

防御率リーグ最下位のヤクルトは投手5人捕手1人。

< ヤクルト 70点 >

1位入札(単独)→寺島成輝(履正社・投手)
2位 星知弥(明治大・投手)、3位 梅野雄吾(九州産業大九州産業高・投手)、4位 中尾輝(名古屋経済大・投手)、5位 古賀優大(明徳義塾・捕手)、6位 菊沢竜佑(相双リテック・投手)

 チーム打率.256は広島に次いでリーグ2位、チーム防御率4.73は5位DeNAの3.76を圧倒的に引き離すリーグ最下位。6人指名中、投手が5人、捕手が1人という指名内容は大いに納得できる。寺島は重複が予想された超高校級左腕で、真中満監督は「即戦力候補」とコメント。相手打者や展開を見ながら力の入れ具合に強弱をつけ、ストレートと同じ腕の振りでスライダー、フォークボールを操る技術も備えている。「即戦力」と言いたい気持ちはわかるが、テークバック時に体が割れないのは不安要素。2、3年先の戦力だろう。

 2位の星は4年春になってリーグ戦初勝利を挙げた。山崎福也('14年オリックス1位)、上原健太('15年日本ハム1位)、そして同学年の柳裕也(中日1位)がいたためリリーフを余儀なくされたわけだが、4年になって先発に転向して春1勝、秋は立大戦を残した段階で2勝2敗、防御率はリーグ3位の2.35と安定感を増している。ヤクルトではいろいろな起用法が考えられるが、不足しているのはリリーフ。最速154キロを主体にしたピッチングもリリーフ向きである。

阪神、巨人の野手重視は評価に値する。

 私が70点以上つけたのは以上に紹介した5球団。今年は投手に好素材が多く、70点以下でも中日・柳裕也(明治大)、楽天・藤平尚真(横浜)、DeNA・濱口遥大(神奈川大)、日本ハム・堀瑞輝(広島新庄)、広島・加藤拓也(慶応大・投手)が1位で指名された。

 2位で中日は京田陽太(日本大・内野手)、広島は高橋昂也(花咲徳栄・投手)という1位候補の交渉権を確保しているので70点以上をつけてもいいが、全体的にまとまりのない散漫な印象を受けたため、評価を落とした。それでも例年にくらべれば全球団、見ごたえのある指名をしたと思う。

 点数は低いが注目したのは、野手の大山悠輔(白鴎大・内野手)を単独指名した阪神と、外れ外れ1位で吉川尚輝(中京学院大・内野手)を指名した巨人だ。阪神は金本知憲監督の主導で昨年が1位高山俊、2位坂本誠志郎、巨人は'15年が2位重信慎之介、'14年が1位岡本和真、'13年が1位小林誠司、2位和田恋を指名してきた。

 プロ野球の世界は往々にして投手偏重、守り重視で選手を補強するが、一軍は野手16~17人、投手11~12人で構成される。それでいて「投手7~8割」という言葉が常に大手を振ってまかり通る。そういう「守り信仰」に一石を投じる指名だと思う。

 なお、70点未満の7球団に順位をつければ中日、日本ハム、楽天、広島、阪神、巨人、DeNAの順で、採点は60~69点となる。好素材が多い年で、各球団はそれぞれいい選手を指名した。

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田中正義

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