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チェルシーを甦らせたコンテの英断。
3バックを輝かせる両WB+アザール。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2016/10/23 07:00

チェルシーを甦らせたコンテの英断。3バックを輝かせる両WB+アザール。<Number Web> photograph by Getty Images

ラニエリ監督率いるレスターを叩きのめしたチェルシー。コンテ監督のパッションと3バックはプレミアを席巻するか。

アロンソとモーゼスのハードワークを指揮官も絶賛。

 左SBのアロンソには、今夏の移籍時に「プレミア級の新戦力とは言えない」との見方が強かった。実際、4バックで臨んだアーセナル戦ではベンチスタートだった。ウインガーのモーゼスは加入5年目だが、昨季まではレンタル放出対象。チェルシーでのリーグ戦先発は、ハル戦が3年5カ月ぶりという状態だった。

 その彼らが、「ハードワーク」のハードルが高い指揮官すら認めざるをえない奮闘を見せている。新ボランチのエンゴロ・カンテも期待通りのカバー領域の広さを披露しているが、ウイングバックに抜擢された両名も、カンテに匹敵する陰の立役者だと言える。相手ボール時には5-4-1となるシステムの中に変更して、初戦のマン・オブ・ザ・マッチはモーゼス。2戦目ではアロンソがチーム最高の走破距離を記録しながら攻守に貢献した。

 3バック採用はチーム随一の個人技を持つ前線の花形を、4バック時の2列目左アウトサイドから解放する相乗効果をもたらした。エデン・アザールは以前から「ナンバー10のポジションがいい」と口にしていただけあって、レスター戦後に「自由を感じる」とコメントした。

“疑似トップ下”の位置でアザールが決定的な仕事。

 今回のシステム変更後も、アザールが純粋なトップ下を任されるようになったというわけではない。コンテの就任決定当初、3-4-1-2を採用するならアザールが2トップの背後に入る可能性もあると考えられた。しかし今夏に加入したFWのミヒー・バチュアイはレギュラーとしての信頼を勝ち取るまでには至らず、2トップ計画は頓挫。結果、アザールは3-4-3の前線でCFのジエゴ・コスタの左横に収まっている。

 とはいえアザールは、インサイドにボールを持って流れたり、中央寄りのポジションでパスを要求したりするプレーが可能となった。また高い位置でアウトサイドに張り出しているウイングバックが、後方からパスを受けてはタッチライン沿いを駆け上がり、攻守が入れ替われば相手サイドバックへのチェイシングを担当してくれる点も見逃せない。

 レスター戦では、終盤にMFを加えて3-5-1-1へと陣形が変わる前から、コスタと縦の2トップのような位置取りで、アザールが最前線にいる場面も少なくなかった。自ら決めたチーム2点目も、前線中央で中盤からのパスに反応し、ボックス内へと進入してネットを揺らしている。

【次ページ】 4バックの権化、モウリーニョ・ユナイテッドに挑む。

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