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盗塁王・金子侑司が生まれるまで。
こだわりを捨て、周囲に愛されて。 

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市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/10/19 11:30

盗塁王・金子侑司が生まれるまで。こだわりを捨て、周囲に愛されて。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

金子は今季129試合に出場し、打率.265、安打122、打点33、盗塁53、出塁率.331と、プロ4年目で自身最高の数字を残した。

盗塁の成功率を下げていた、ダメな時との差。

 まずは出塁率を上げること。塁に出るために必要なことを最優先した。バットを短く持ち、フォームも変えた。そして「打ちたい気持ちが強すぎて、ボール球に手を出すことが多かった」という打席での意識から変えようと、昨年のオフシーズンと今年の春季キャンプを過ごし迎えた2016年シーズンだった。

 もうひとつ大きかったのが、今シーズンから就任した佐藤友亮守備・走塁コーチとの出会いだ。

「まずはキャンプが始まったときに佐藤コーチと、塁に出ることを考えるのはもちろん、“走る”という部分でもっと改善できることがあるんじゃないかと話し合いました。盗塁の動作すべてを見直したときに、まだまだ無駄がある。いい形でスタートを切れれば成功率も高いんですけど、ダメな時との差が大きかったんです」

足は速いのに、なぜ盗塁死するのか。

 もともとの身体能力の高さや足の速さは備えている。「それなのに、これほど盗塁死するのはなぜだ?」というところを出発点に、できることをスタートさせた。盗塁に必要な、相手ピッチャーの癖を洞察する力はもちろん、投手との呼吸を合わせることや、力みなく一歩目のスタートを切ることを課題にあげて改善に取り組んだ。

 リードをスパイク横幅2足分広げたのも、佐藤コーチのアドバイスだった。

「ほんのちょっとの違いだと思われるかもしれませんけど、自分ではだいぶ大きい変化だと思っています。その2足分のせいで一塁に戻れなくなって、けん制で刺されるという感覚もありません」

 何より、本人の盗塁に対する意識の変化がいちばん大きい。スタート前の手を置く位置や、スライディングの意識など、ふとした練習のときに発見した方法を試して、改善を続けた。試合前の練習でも、金子の走り方を佐藤コーチが見て「姿勢が高い」、「力んでいる」と修正点を伝える。そのやり取りは毎日続いた。

【次ページ】 2番の秋山は待球などの負担にも笑顔で協力。

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