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2016年ドラ1候補は田中正義ら8名。
外れ1位を取るなら投手よりも野手?

posted2016/10/17 11:00

 
2016年ドラ1候補は田中正義ら8名。外れ1位を取るなら投手よりも野手?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

右肩の不安を報じられている田中だが、1位指名は確実だろう。むしろスカウトと球団の力量は田中の“外れ1位”に見えるのかもしれない。

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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 春先にはドラフトで全球団の1位入札があるかも、と言われていたのが創価大の本格派、田中正義だ。ストレートは最速156km/hに達し、2015年6月29日に行われた大学日本代表の壮行試合では2番手として登板し、NPB選抜のプロ若手から7者連続三振の離れ業を演じている。

 この逸材に逆風が吹いたのが'16年春のリーグ戦、共栄大戦である。右肩関節に炎症が発生し、この試合を含めて春季リーグ戦の登板がわずか2試合にとどまったのだ。侍ジャパンへの参加を見送り、ひと夏を治療・リハビリ期間に充て、復活のお披露目となったのが秋のリーグ戦。ここまで3勝0敗は悪くはないが、物足りないのが完投の少なさ(1人で投げ切ったのは7回降雨コールドで引き分けになった東京国際大1回戦だけ)。防御率0.00だった'15年秋は6勝0敗のうち5試合が完封勝利だった。

 この田中の状態を何と形容したらいいのだろうか。低迷、停滞ではないし不振、不調でもない。横這い、あるいは足踏みでもいい。要するに良いことは良いが、というはっきりしない状態なのだ。

セ・リーグ各球団に潜む“ドラフトあるある”。

 田中の足踏み状態を横目にスカウトの評価が上がっているのが佐々木千隼(桜美林大)だ。4年になってからの進境が著しく、10月8日には東海大を完封で退け、在籍する首都大学リーグでは菅野智之(東海大→巨人)以来の年間7完封を記録した。

 佐々木の1位入札が有力視されているのが巨人と阪神というのは、ドラフトを考えるとき非常に暗示的だ。『ドラフトあるある』という本があったなら、「その年ナンバーワンの選手に向かわないセ・リーグ」という項目が必ず入るからだ。たとえば、次に紹介する名選手に入札した球団はパ・リーグのほうが多い。

 '89年・野茂英雄(新日鉄堺)……パ=ロッテ、日本ハム、ダイエー、オリックス、近鉄、セ=大洋、阪神、ヤクルト
 '85年・清原和博(PL学園)……パ=南海、日本ハム、近鉄、西武、セ=中日、阪神
 '98年・松坂大輔(横浜)……パ=日本ハム、西武、セ=横浜

【次ページ】 ある球団スカウトは「2000%の選手」と田中を絶賛。

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