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最後に決める「本田△」はどこへ……。
本当にイラク戦の出来に納得なのか。 

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松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/10/07 11:40

最後に決める「本田△」はどこへ……。本当にイラク戦の出来に納得なのか。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

今季本田圭佑がミランでリーグ戦のピッチに立ったのは2試合で、どちらもラスト10分前後での途中出場だった。

なぜ本田は自身のパフォーマンスに及第点を与えたのか。

 きっとハリルホジッチ監督も、本田の一発を信じていたに違いない。だからこそ60分に同点に追いつかれてからも、絶不調の彼をピッチに残したはずだ。

 79分、ついに背番号4が今でも日本の絶対エースであることを証明するための瞬間が訪れた。原口元気のクロスを、ファーサイドから頭で叩く。「本田△」なら必ず決めてきた場面。ところがボールはゴールポストをかすめ、枠の外へと転がっていった。

 2分後、小林悠との交代が告げられた。チームは終了間際、山口蛍の劇的なゴールで勝利したものの、きっと試合後の本田は悔しそうな顔を浮かべるだろうと思っていた。ところが、取材エリアに現れた彼は、意外なほどさっぱりした表情で語り始めた。

「体が動いていない感触はなかった。決めるべきところで決めていればとか、いくつか反省や課題はあるけど、(それ以外の自分のプレーに関して)特段気になったところはなかった」

 かつての本田は、ビッグマウスによって周囲からのプレッシャーと期待を集めた上で、ピッチで結果を残すことで評価を高めてきた。一方、結果を残せなかったときには潔く実力不足を認め、次の試合では一回り逞しくなって帰ってきた。

 そんな彼が、イラク戦での自身のパフォーマンスに及第点を与えていることに、正直、がっかりした。「本田△」には、この日のようなプレーで納得してほしくなかった。

ボールを失わない本田がいたからこそできていたこと。

 取材エリアでの話題は、チームの攻撃面の課題に移る。

「本当は、こっちがむこうをバカにしたい。そういうところは僕やヤットさん(遠藤保仁)の真骨頂でね。僕もスピーディーさが欠けるとか、いろんな意見があるでしょうけど、アジアレベルで言えば徹底的に相手をバカにするプレーは得意としている。

 でも、それは今、求められていない。怖い攻撃をもっと増やしていこうというのが今の代表のテーマなので。それはそれで、前向きにチャレンジしたいという気持ちで臨んでいる。自分になかったところなので。別に否定的ではないですよ。でも、本来はイラクみたいな国が僕たちを必要以上にリスペクトしていないのは腹立たしい。本当は、むこうがうざいと思うくらいボールを回さないといけない」

 縦に速い攻撃ばかりでなく、ザッケローニ体制時のように相手を押し込むパス回しも必要という主張だ。それによってイラクが自陣に引きこもらざるを得ない展開に持ち込まなければいけない、と。

 ただし、ザック時代のパスワークは、相手を背負っても決してボールを失わない本田という受け手がいたからこそ、横パスの中に縦パスが混じり、機能していた。イラク戦でのように、本田が簡単にボールを失う状態でポゼッションにこだわれば、むしろプレスの餌食となり、イラクに「バカにされていた」可能性だってある。

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