野球善哉BACK NUMBER
筒香嘉智の成長を支えたある集団。
チームの“外”で成長するという発想。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2016/10/04 11:30
今年の筒香嘉智はOPSが1.1を越え、もちろんリーグ1位。名実ともに日本最高のバッターになったと言えるのではないだろうか。
球団の指導と衝突する危険もあったが……。
ロサンゼルスで体験したトレーニングは、筒香が日本でやってきたこととは次元が違っていた。
日本式のトレーニング方法に反発しているように見られるリスクもあったが、それでも筒香は信じてやり続けた。当時の状況を、本人はこう話していた。
「これをやっておけば、絶対に身に付くなというものでしたね。どういう風に、と聞かれると説明が難しいんですけど、体に一本の軸ができるというんですかね。3~5年後に力になるだろうと感じました」
計算すれば、その3~5年後というのは、筒香がブレークした2014年から今年までの期間にあたる。
筒香の身体に一本の軸が通り、スイングも年を追うごとに隙がなくなった。「逆方向への打球」という言葉を筒香は近年口にするようになったが、そのバッティングは、体作りと並行して作り上げてきたものだった。筒香はその狙いをこう語る。
「世界を見たら、どこをみても一流のバッターは逆方向を意識しています。試合で打つためには当たり前のことなんですけど、その習慣が日本にはあまりないですよね。引っ張ってばかりのバッティングをしていたら、打てなくなる時が来る」
筒香が驚愕の結果を残し、プロジェクトにも光が。
ドミニカのウインターリーグの武者修行を経た今季、筒香が驚愕の結果を残したことで、長年のプロジェクトにも光が当たったことになる。
瀬野は言う。
「よくいろんな方から、よく成功しましたね、凄いですねって言われるんですけど、これだけの結果が出たのは筒香本人が努力したことによるものです。ただサポートしている僕らの側からすると、今こうなることはイメージしていました。それだけのことに取り組んできましたから」
今後、筒香の取り組みが注目を浴びるのは自然の流れであろう。それは野球界に新しい風が舞い込んできた、といえるかもしれない。