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カープを優勝に導いた「我慢の男」。
菊池涼介は……弱みを見せなかった。

posted2016/09/24 11:30

 
カープを優勝に導いた「我慢の男」。菊池涼介は……弱みを見せなかった。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

フェンス激突後、担架を拒否してベンチへ戻る菊池。3年連続ゴールデングラブ賞の二塁守備はもちろんのこと、今季は打席でも打率3割超と頼もしい。

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Hideki Sugiyama

 9月8日のマツダスタジアムが最も沸いたのは、ビジョンで阪神の先制が伝えられたときだった。カープがマジックを2として迎えた、本拠地3連戦の最終日。3連勝中のカープは中日を相手に3点をリードし、マジック対象チームの2位・巨人は甲子園で阪神と戦っていた。

 25年ぶりの優勝を地元で見届けたいというカープファンの願いはしかし、土壇場で潰えることになる。巨人が8回に、坂本勇人の3ランで逆転。速報をチェックしていたマツダスタジアムの観客も徐々にその事実に気付き始め、目の前の試合への注意が散漫になり始めた。

 悪い流れは続く。坂本のホームランから数十秒後のことだった。

 6回にファールフライを追ったカープの二塁手・菊池涼介が、目測を誤ってフェンスに激突。スピードに乗った状態で右膝をしたたかに打ちつけ、痛みにのたうち回る。

 「キクがあんなに痛がるなんてよっぽどだな」と、ファンのつぶやきが聞こえた。

 そう、破天荒キャラでムードメーカーの菊池だがその実、誰よりもチームを一番に考えて、言動に気を配っていることを広島の人たちはよく知っている。記者の間で「本当は繊細な人なのに、少し露悪的なところがある」と評されるように、悪ぶったり強がったりするのが菊池という男なのだ。

菊池「上を向いて、前を向いて。明るく元気に」

 担架も出されたが、菊池はこれを拒否して自力でベンチへと下がる。

 約10分間の治療を経て再び二塁の守備位置に就くと、その後は表情を変えることなく勝利の瞬間まで仕事を全うした。試合が終わると、無言で病院へと直行(診断結果は打撲)。マジックを1としながら負傷してしまったのはさぞかし不安だったと思うが、決して弱みを見せようとしなかった。

 その1週間前に行なったインタビューで、菊池が言っていたことが思い出される。

「上を向いて、前を向いて。明るく元気に。そこはずっと心がけていることですね」

 野村謙二郎前監督から丸佳浩とともに新たなリーダーとして期待され、辿り着いたのが「僕らが沈んじゃダメだ」という境地だった。

【次ページ】 石井コーチ「キクが一番我慢しているはず」

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