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日本は「スラッガー受難の国」なのか。
守りの野球を美化し、攻撃を軽視。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKyodo News

posted2016/09/07 07:00

日本は「スラッガー受難の国」なのか。守りの野球を美化し、攻撃を軽視。<Number Web> photograph by Kyodo News

プロでも、本塁打王は他のタイトルに比べて外国人が多い。そこには、育成段階での「偏り」も影響しているはずだ。

決定力不足ならば、打ち続けるしかない。

 先のリオ五輪で、水球の日本代表が32年振りに五輪出場を果たした。全敗したものの、点を取られてもいいから、とにかくカウンター攻撃をかけ続ける「超攻撃型」というスタイルは鮮烈な印象を残した。

 監督の大本洋嗣は、このスタイルにたどり着いた1つの理由として、こう語っていたことがある。

「ぜんぜんシュートを打たないで負けるのを見ていて、こいつら、つまんなくねぇのかなって思ったんだよね。日本チームはどの競技も決定力不足っていう言葉を使うけど、それを解消するには、打ち続けるしかないんだから」

どこまでいっても、打って守るのが野球だろう。

 大本の話を聞いて以来、野球界で頻繁に聞かれる1つの言葉に急に違和感を持つようになった。

「うちは、守りの野球ですから」――。

 そんなもの、あるのだろうか。どこまでいっても、打って守るのが野球だろう。なぜ、そこまで極端に攻撃を軽視するような言い方をする必要があるのか。

 両代表も明言こそしていないものの、結果だけを見れば、それに近い思考を持っていると思わざるを得ない。

 戦力に乏しいアマチュアチームが、ディフェンス重視の野球を選択するというのなら、まだわかる。しかし代表チームは、いわば世代の「オールスター」である。ピッチャーの球筋に唸らされるだけでなく、さすがと思わせる打球も見たいではないか。

 スラッガー受難の国――。先の代表戦を観戦し、そんな言葉を思い浮かべずにはいられなかった。

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