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井上康生と井村雅代に共通点が?
真逆の指導法の底に「選手のため」。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byJMPA

posted2016/08/21 16:00

井上康生と井村雅代に共通点が?真逆の指導法の底に「選手のため」。<Number Web> photograph by JMPA

日本シンクロ界を見事に復活させた井村雅代コーチ。彼女の手腕は、何よりも結果が雄弁に物語っている。

メダルを取っても「残念ながら……」と話した真意。

 チームでメダルを獲ったあとも、選手の頑張りを語りつつ、厳しい言葉も並んだ。

 昨年から、「常に後ろからついてくるようじゃだめ、私を抜きなさい」と言い続けていたことを明かした上で、こう続けた。

「(最後まで追い抜くことは)なかった。残念ながら、あの子達はない」

 言葉だけを捉えれば、そして井上と比べれば、井村は相当に手厳しい。その対照的な表現が、井上とのアプローチの違いが表れている。しかし、それぞれのやり方を貫き、等しく結果を出してみせた。

選手の力を最大限に引き出し、結果を出させたい。

 では、指導者の手法に「正解」はあるのか。

 手法そのものに、可否はない。そして言葉もまた、根本を問えば正解はない。井上が選手にかけてきた言葉も、井村が選手にかけてきた言葉も、どちらがいい悪いもないのだ。

 ただし、両者には共通している事実がある。

 選手の力を最大限に引き出し、結果を出させたいという思いだ。

 どのような結果であれ、選手を批判することなく評価してきた井上には、選手に金メダルを、メダルを獲らせたい、強くしたいという思いが根底にあった。

 井村もまた、その思いは等しい。

「私の責任の取り方というのは、あの子たちにメダルを獲らせてあげること」

【次ページ】 自分の名誉や欲ではなく、すべては選手のために。

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