2016年の高橋由伸BACK NUMBER

7月反攻。映画『シン・ゴジラ』に、
高橋由伸監督の姿を見た。 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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photograph byHideki Sugiyama

posted2016/08/15 11:45

7月反攻。映画『シン・ゴジラ』に、高橋由伸監督の姿を見た。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

“慎ゴジラ”阿部慎之助の打棒には、ことのほか期待が大きい高橋監督。「阿部が打つと、他の打者も勇気が出る」と称賛。

村田、阿部、大竹、内海らベテランが与えた落ち着き。

 由伸監督は、打線を組み替えた。

 7月24日のDeNA戦(横浜)で、今季初めて阿部慎之助を4番に据え、長野久義を1番に戻した(長野は5月29日の阪神戦から4番を打っていた)。この日は先発全員の15安打と打線が見事に機能し、DeNAに9-1大勝。

 由伸監督はさらに村田、ギャレットを5番6番にした。投手では大竹、内海のベテランの力を頼った。

 すると、どうだろう。あれだけ貧打線といわれた巨人打線がこれ以降つながりはじめた。投手のローテーションも落ち着き始めた。

 「劇的ビフォーアフター」のように新しい素材を使ってガラッと変わったのではない。「ビフォー」の素材で勝ちはじめたのだ。なんということでしょう。

 若手も目立ってきた。田口麗斗は7月に「3勝0敗、防御率1.14」をあげ、見事にセ・リーグ月間MVPを獲得。もまれてもまれてここまできた。橋本到も2番に定着。

最大の若手は“監督としての高橋由伸”なのだ。

 今持っている戦力で着実にたたかう。あわてない高橋由伸監督をみていると『シン・ゴジラ』で奮闘する若手政治家を思い出す。

 ちなみに映画で長谷川博己演じる内閣官房副長官は39歳の設定。高橋由伸は今年41歳。ああ、そうか、チームの雰囲気を変える若手の台頭を期待していたけど、今年の巨人の最大の若手は“監督としての高橋由伸”なのかもしれない。

 高橋由伸は、昨年秋に突如出現した巨大不明生物ならぬ巨人監督問題に巻き込まれた。そう、巻き込まれたといってよいだろう。

「来年も現役を続けさせてあげればいいのに」という声や「高橋由伸は入団時から周囲に振りまわされているな」という外野の声は正論である。

 しかし、お家の危機を正統派のスターに無茶ぶりして託した球団の判断に、41歳の高橋由伸はどう応えるのか。難局をどうのりきろうとするのか。やはり失敗してしまうのか。私は興味津々で仕方なかった(だからこの連載もはじめた)。

 もっと正直なことを言うと、やっぱり1年目ということで目前の困難に戸惑う高橋由伸の“ドキュメント”も見てみたかったのである。

【次ページ】 予想以上に高橋由伸は動じない指揮官だった。

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