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インハイは「就活ラストチャンス」。
4人の3年生が見せたJ内定への執念。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2016/08/17 08:00

インハイは「就活ラストチャンス」。4人の3年生が見せたJ内定への執念。<Number Web> photograph by Takahito Ando

高は市船のコンダクターとして中盤に君臨。9度目のインハイ制覇を成し遂げる原動力になった。

瀬戸内・安部は今春出遅れたが焦らず調整した。

 地元・広島の代表として出場した瀬戸内の安部にとっても、インターハイは大事なアピールの場だった。全国的にはそこまで有名ではないが、今年は『勝負の1年』だった。関東から広島にやって来た能力の高い選手たちは1年時から出番を掴んでいながらも、ここまで一度も全国大会に出ることが出来ずに最終学年を迎えた。

 その中でより大きな期待が寄せられていた安部は、昨年はプロから注目を浴びる存在だった。しかし、今年の春先はコンディション不良で出遅れた。

「プロになりたい気持ちは凄く強いし、なれる自信はある。でも、プロになりたいから、目立ったプレーをしようとは思わない。プリンスリーグでも、インターハイでも、目の前の試合でしっかりと集中してプレーすることで、評価は後からついてくると思っています」

 周りからはプロが遠のいたかのように見えたが、彼は全くそう思っていなかった。これまで通りのプレーを、より質を高めて行く。練習から高い意識を持って、焦ること無く努力を積み重ねた。

市船が今大会で唯一失点したのは安部の一撃だった。

 結果、彼はインターハイでブレークした。プリンスリーグでもゴールを量産していた彼は、瀬戸内の攻撃の中軸として君臨し、ベスト8進出の立役者になった。準々決勝の市立船橋戦でも、彼は得意のドリブルとワンタッチプレーの絶妙なバランスを駆使して、バイタルエリアでキレのある動きを見せた。

 これには市立船橋守備陣も手を焼き、結果として今大会で唯一の失点を喫した。決めたのは安部だった。1-2で敗れはしたが、試合を通じて彼の存在は間違いなく市立船橋にとって脅威だった。

「相手が市立船橋だろうが、戦える自信はあった。そもそも相手が市立船橋だからと言って、変にリスペクトをしすぎてしまうことが一番嫌だった。勝つことしか考えていなかった」

 彼はインターハイベスト8、優勝した市立船橋を苦しめたという『結果』を、全くそうとは捉えていなかった。もっと上を狙えた、もっと出来たという気持ちが支配をしていた。

 だからこそ、彼に新たなJクラブのスカウトの目が向かうようになった。今、彼には複数のJクラブが興味を示している。そこには強豪クラブもある。まさしく彼は目標をその手に掴もうとしている。

【次ページ】 東福岡を撃破した昌平MF針谷にも大きな賞賛が。

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