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GK壊滅危機で台頭した磐田の救世主。
20歳の新星・志村滉、驚異の観察力。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2016/07/23 07:00

GK壊滅危機で台頭した磐田の救世主。20歳の新星・志村滉、驚異の観察力。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

志村はルーキーの頃に「ポゼッションに関われるところ」も自身の特徴として語っている。将来的には磐田、そして日本代表の守護神を担える逸材だ。

市立船橋でGKの基礎を徹底的に叩き込まれた。

 そこから気に掛けて見るようになった伊藤は、志村が中3のときのプレーを見て「先に動いて(ハイボールに対して)かぶったりはしたのですが、堂々とプレーしていた。『あ、この性格っていいな』と思ったんです。ミスしても動じないというか、ぶれないところがいいなと思った。地元の子だし、市船で育てたいと思った」と、彼の市船進学を熱望したことで、運命の歯車はゆっくりと動き始めた。

 高校に進学すると、伊藤は志村にGKとしての基礎を徹底して植え付けた。クロスボールの処理、ポジショニング、シュートストップ……。その中で一番こだわったのが、“フォーム”だった。

「高校時代はフィジカルに関してはあまり求めてこなかった。それはその先のステージでやるべきで、それまではフォームだけはきちんとやろうとアプローチしました。彼は元々姿勢の良さだったり、肩甲骨の柔らかさだったり、そういうものはあった。いい素材だったので、荒削りだった部分をしっかりとやりました」

高校時代から際立っていたしなやかな動き。

 筆者が彼を初めて見たのは、高1のときのプリンスリーグ関東1部(現在は1部のみ)の試合で、一番に目が行ったのは、彼の姿勢の良さだった。ゴール前で構える姿勢はもちろん、空中での姿勢の良さにも魅了された。難しいコースのボールに対しても、身体がしっかりと伸びて、“スッ”という擬音が入りそうなくらいしなやかに腕が伸びて来る。手首の返しもうまく、伸び切った状況でも正確な弾き出しやパンチングコントロールをすることが出来る。ハイボールのキャッチも一緒で、両手がスッと伸びて来て、ライナーでも放物線を描くボールでもしっかりと最高到達点で正確に両手に収める。

 こんなにしなやかなGKはなかなかお目にかかれないタイプだけに、かなり興味を引かれた。その時、伊藤と話をすると、志村について「こいつは時間がかかるけど、間違いなくいいよ」と、手応えを浮かべながら話す表情が印象的だった。

 高2になると不動の守護神としてゴールに君臨した。そして、志村の成長をさらに促したのは、伊藤がフォームの構築と同じように重要視し、アドバイスを送った“ある視点”にあった。

【次ページ】 「対戦相手のチームのGKを分析しろ」

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