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なぜ今のホンダはF1で勝てない?
その根源的な答えが……出たかも。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2016/07/02 08:00

なぜ今のホンダはF1で勝てない?その根源的な答えが……出たかも。<Number Web> photograph by Getty Images

アロンソ、バトン共に、マシンは確実にパワーアップしているとコメントし続けている。あとは、結果のみなのだが……。

「(ホンダの)何が第2期と変わってしまったのか?」

 もちろん、勝てない原因はたったひとつではなく、どの答えも間違いではない。

 しかし、時代を俯瞰して見たとき、'80年代に黄金時代を築いたホンダが、2000年以降に1勝しかできない理由には、もっと本質的な理由があるのではないか。

 そして、その答えを知るのは、実際にF1を戦っているホンダのスタッフではないのだろうか。

 あるグランプリで、ホンダのF1プロジェクトの総責任者である長谷川祐介エンジニアに、こんな質問が飛んだ。

「何が第2期と変わってしまったのか?」

 長谷川総責任者は、少し考え込んだ後、こう答えた。

「私は第2期のことはよく知らないので、これはホンダとしてではなく、あくまで個人的な見解ですが、当時('80年代)のF1の技術は必ずしも技術屋から見れば、最高峰というわけではなかったんじゃないでしょうか。だから、ホンダが必死になってやったら、頂点に立てた。あまりいい表現ではないかもしれませんが、村で一番足の速い子が駆けっこに出て勝てた、みたいな感じです。それが、第3期からは駆けっこではなく、完全にオリンピックになっていた」

過去のF1活動をなぞっても、今の勝利につながらない。

 確かにホンダが'80年代に勝ち始めたとき、自動車メーカーで本格的にF1活動を行っていたのは、フェラーリぐらいだった。

 その後、復帰したルノーがホンダの黄金時代にピリオドを打ち、第3期に入ると、ルノーだけでなく、メルセデス、BMWにも、ホンダは後れをとってしまった。

 だが、それを語ってしまっては、第2期の栄光がかすんでしまう。

 伝説はうつくしい記憶のままで残しておきたい。

 そういう気持ちが、ホンダのF1活動を美化する遠因となってしまったのではないだろうか。

【次ページ】 「日本製が一番、と言ってたらもう世界で通用しない」

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