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レブロンこそ「スーパーヒューマン」。
NBAファイナルで、常識は覆った。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2016/06/21 11:20

レブロンこそ「スーパーヒューマン」。NBAファイナルで、常識は覆った。<Number Web> photograph by AFLO

3度目のNBAチャンピオン、そして3度目のファイナルMVPに涙を見せたレブロン・ジェームズ。まだ“王”の座は渡せない。

相手の策を完全に裏目に出させた力技。

 格の違いを見せつけた瞬間だった。レブロンはフリースローを3本沈めた後、次のオフェンスではファウルを警戒したエジーリをあざ笑うかのように3ポイントシュートを鮮やかに決めた。

 逆転。

 相手方の決断を「後悔させてやる」とばかりに、最高のプレーを見せた。おそらく、カーHCはエジーリを投入したことを後悔したことだろうし、今季を最後にFAになるエジーリは、このプレーでウォリアーズとの来季の契約は怪しくなったと個人的には思う。

 コートに出ている選手が、均等にシュートを打てるオフェンスを作る「民主化政策」を取って成功を収めてきたウォリアーズは、2連覇まであと一歩のところまで迫った。戦略的には決して失敗ではなかったが、ここに来て疲労の色が濃くなった。

 第7戦の終盤になると、過去の例を振り返ってみても、シュートが入らなくなる。カリーでさえ、リングに当たらないような精度の低いシュートが出てしまうし、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーン、ハリソン・バーンズの面々がことごとくシュートを外した。

疲労でメンバーの質が落ちたことが致命的だった。

 また、民主主義にとって重要なのは構成員の質だが、センターのアンドリュー・ボーガットが膝のケガで第5戦の途中で退場(ボーガットがいなかったため、エジーリがプレーせざるを得なかったのだ)、第6戦で腰を痛めたイグダーラも本調子ではなかったことで、民主主義の質が低くなっていた。それでもあと1本シュートが決まっていれば優勝できたかもしれないのだから、このシステムの質は極めて高い。

 おそらく、この両チームのライバル意識は来季にも受け継がれ、さらなるストーリーを生み出すことだろう。

 正直、ファイナルが始まる前は、民主化政策を推し進め、次世代のバスケットボールを展開するウォリアーズが2連覇を達成すると思っていた。第2戦までの内容を見て、さらに第4戦を敵地で取った時は、「勝負あった」と思っていた。

 そこから巻き返したのは、アービングとレブロンの超人的な活躍であり、特に第5戦、第6戦、第7戦のレブロンは歴史に残る活躍を見せたと思う。

【次ページ】 多彩なキーワードに最後に加わった「接戦」。

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