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本田圭佑がホルンの監督解任を語る。
「今回は結果出せたバージョン(笑)」 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/06/12 11:30

本田圭佑がホルンの監督解任を語る。「今回は結果出せたバージョン(笑)」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

本田圭佑のサッカー選手と経営者と教育者というマルチタスクは、今も深化している。

ブルガリア戦は、ホルンの最終節と同じ日だった。

 6月7日。大阪・吹田。

 ボスニア・ヘルツェゴビナとのキリンカップ決勝戦を戦った日本代表は、1-2で敗れた。4日前のブルガリア戦も、本田は左足の筋肉の痛みで欠場。結局回復が間に合わず、2試合連続でピッチに立つことはなかった。

 試合後、本田はいつものようにチームに対して舌鋒鋭く自分の意見を述べていた。

 ブルガリア戦が行われた3日は、ちょうどホルンも最終節を戦った日だった。しかし、その後本田は負傷の影響で練習に参加せず、記者の前に姿を現すことはなかった。そのため、ホルン優勝について彼が直接言葉を発する機会はなかったのである。

 唯一、所属事務所(ホルンの経営会社)からの公式リリースに文面でコメントを寄せていた。そこには監督交代の件も触れられていたが、エピソードを交えながらこう書かれていた。

「4-0で勝った後に解任を決定したので、翌日にミハイロビッチやミランの選手からも鬼だと大批判を受けたことは覚えてます(笑)。でも勝ち負けでなく満足できてなかったんで。優勝できてなかったら何を言われてたかわかりませんが。何度も言ってきてますがホルンはグローバルなクラブとして世界に認知されるチャンスです。

 今の所日本人が増えてきているのは我々組織の現場のネットワークの少なさが表れているだけです。世界の若くて情熱のある選手に目を向け始めているのでいずれ多国籍集団になると思います。現地の批判は理解ができるものです。変わるというタイミングでは批判はつきものですから」

 鬼の判断を下した経営者、本田。ただその決断に至った本当の理由については、ここでも触れられていなかった。

本田が丁寧に説明してくれた監督解任の理由。

 ボスニア・ヘルツェゴビナ戦後、1人立ち去ろうとする本田に、そのことを直接ぶつけてみた。

 なぜ、監督を代えたのか。なぜ、ドラスティックな変化を施したのか。なぜ、大事な時期に勝負に出たのか。

 その答えを、本田が語り出した。

「最後、昇格できるかできないか、優勝できるかできないかは、もう開き直っていた。ダメな可能性があることもイメージしていましたし。でも、信じて開き直るしか僕の立場とすればもうやることはなかった。

 ただ、やることはやった。意思決定は自分のベストを尽くした段階までいったので。監督を代えるところまでいって、実際に監督を代えたあとも選手の状況を確認しながら、自分たちのやりたいサッカーというもの、自分のフィロソフィーを浸透させていく作業を全部やった。だから最後は本当に開き直って、あとは楽しんでくれという感じだった。

 あのね、なんで監督を代えたのかといえば、前の監督は若手に対してうまくコミュニケーションを取ってくれなかった。試合に出ていない人たちに。濱吉さんが来て、日本人がスタメンで出ているかといえば、むしろ出ていない。オーストリア人や外国籍選手を含めて、ものすごくフラットな目線でメンバーを決めている。チームの雰囲気や選手の実力を見ながら、当然指揮をとっている。

 濱吉さんが来て一番大きく変わったのは、出ていない人たちに対してのケアの仕方。出ていない人たちに、なぜ出られないのかとしっかりコミュニケーションを取る。僕らのクラブは、別にビッグクラブではない。明日勝たなかったらクビということにはならない。厳しい世界がプロであるべきやけど、とはいえそんな短期的なモノでクビにするような、短い勝負を迫られているわけではないので。中長期の視点でもクラブ経営をしていかないといけない。

 今後アジアやアフリカや南米や、世界から若い選手を連れてきたいけれど、一方で現地のオーストリアの選手育成にも貢献していかないといけない。やっぱりいろんな大きな役割が、僕らの経営にはあるんですよ。勝つこと以外にも大きな意味や役割があって、社会性を持って僕らがホルンの経営に入っていった意義を、いま1つずつ実現していっている。

 ただ、前の監督は地元のオーストリア人だったにも関わらず、あまりに利己主義というか。自分の勝利しか考えていなかった。だから俺はそこが納得いっていなかったところ。このことは、まだメディアには話したことがなかった。そこは、俺が監督に『違う』と言った。以前は勝てばOKやというようなコメントを公には残したと思うけど、勝っていたけども満足していなかったのは、俺の中ではそこがあったから」

【次ページ】 「今の俺らのクラブにモウリーニョは必要ない」

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