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本田圭佑とミラン、最後の“捨て身”。
コッパ決勝でファンを沸かせた変貌。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2016/05/24 07:00

本田圭佑とミラン、最後の“捨て身”。コッパ決勝でファンを沸かせた変貌。<Number Web> photograph by Getty Images

コッパイタリア決勝後、帰国の際には「ひどかった」とシーズンを振り返った本田圭佑。ミランには身売りの噂もあるが……。

“これこそ、ずっと見たかったミランなんだよ!”

 決勝戦の夜、ミランのボールポゼッションは56.6%を記録し、セリエA5連覇を達成した絶対王者にゲームの主導権を渡さない。パス成功率でもユーベを上回り、パスの総数自体も150本近い差をつけた。

 今季、本田が4-2-3-1で使われた機会は皆無に等しい。本田を先発に重用した前任の指揮官ミハイロビッチが4-2-3-1を用いたのは、10番をベンチに下げ、代わりにFWメネズやMFボアテングを交代出場させた後半のわずかな時間帯だけだった。

 新米監督ブロッキは選手たちの人格を見極めながら、シーズンの最後の最後で、現チームにおける戦術的最適解を発見した。完勝した1月末のミラノ・ダービーを除けば、今季の戦術的ベストゲームに挙げたいほど、コッパ決勝でのミランは機能性は抜群だった。

 何より、ローマ戦までまったく走れていなかったチームが、ユーベに走り勝っていた。

 ミラニスタたちは一様に叫んだはずだ。

“これこそ、ずっと見たかったミランなんだよ!”

リーグ戦でつけられた34点の勝ち点差。

 66分、本田は自陣エリア前に迫ったMFポグバのマークについた。左右にふってかわそうとするポグバを、腰を落とした本田は逃さない。フランス代表のエースは、苦し紛れのクロスを放り込むしかなかった。

 FWディバラが倒れこんだまま起き上がらなかった82分の接触プレーでは、主審が笛を吹かないと見るや、ミランの選手たちはプレーを止めずにカウンター攻撃を続行した。この手の非情な勝負勘も、これまでのミランに欠けていたものだ。リーグ戦でつけられた34点分もの勝ち点差を感じている選手は、もはやミランにはいなかった。

 ユベントスは明らかに焦っていた。

 MFポグバはラフプレーで警告を受け、智将アッレグリはテクニカルエリアから大きくはみ出て、あらんばかりの大声を張り上げていた。ベンチの主将ブッフォンも、後半に入ってから立ちっ放しだった。

 88分に、本田はイエローカードを受けた。両脚で飛び込む危険なプレーだったが、ボールを持ったMFポグバを逃がすわけにはいかなかった。勝負師のファウルだった。

【次ページ】 ミランの泣き所は、フィニッシュを託すFW。

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