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“重し”高橋秀人と“戦う”水沼宏太。
2人が甦らせたFC東京、上海を圧倒。 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2016/05/20 10:30

“重し”高橋秀人と“戦う”水沼宏太。2人が甦らせたFC東京、上海を圧倒。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

鳥栖時代から水沼宏太の戦う姿勢は際立っていた。父はあの水沼貴史氏だ。

森重に『お前が蹴って』と言われたFK。

 ターニングポイントとなったビン・ズオン戦でも、酷暑の中で走り抜いた水沼。選手ミーティングでは「忌憚なく自分の思うことをみんなに伝えた」と、常にポジティブなオーラを放つ彼らしい振る舞いでチームを鼓舞した。

 それは確実に選手たちに伝播し、「チームが苦しい時間帯も、宏太はいつも声を出して味方を盛り上げる。みんな感じるものがあったと思う」(東慶悟)と、新戦力は徐々に精神面でもチームを支える存在になろうとしている。

 そんな水沼が、試合を動かす。43分、相手ゴール前で得たFKのチャンス。ボールスポットには森重と水沼が立った。

「距離が近いので『モリくん、蹴ってよ』と言ったんですけど、『お前が蹴って』と言われたので、思い切り蹴りました」

 相手の壁が飛ぶことを想定し、壁下目掛けて右足を振り抜くと、ボールは思惑通り障壁をくぐり抜けてゴールに突き刺さった。

 ピッチにいた選手たちが皆、水沼の周りに輪を作る。拳を突き上げる水沼。そして、歓喜は再び後半にも訪れる。

リーグ戦とACLで起用を分ける監督にアピール。

 1点を追いつかれて迎えた、65分。FC東京は前半から繰り返してきた攻撃陣の好連係から、左サイドの徳永悠平にパスが渡る。徳永が冷静にクロスを送ると、そこに走りこんできたのは水沼。右足のボレーシュートが豪快に決まる、ファインゴールだった。

「この試合にかけていた。結果を出したかった」

 現在、城福監督はリーグ戦とACLで攻撃陣を中心に選手起用を使い分けることが多い。水沼はリーグ戦ではベンチスタートが続いている。だからこそ、結果が欲しかった。味方に声をかけ、チームのために走ってきた男がゴールという形で示した気概。紛れも無く、この試合の勝因の一つである。

【次ページ】 中盤の“重し”に指名された高橋秀人の仕事。

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