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ベイスターズ今永昇太のコメント力。
新人離れした理知と投球の源は? 

text by

日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/05/18 11:00

ベイスターズ今永昇太のコメント力。新人離れした理知と投球の源は?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

打線の援護に恵まれず負けを4まで重ねたが、5月6日の広島戦で初勝利、続く5月14日の阪神戦でも2勝目を勝ち取った。

「『なぜ勝ったのか』ということを説明できるように」

 5月14日、プロ2勝目を挙げた阪神戦後の囲み取材でも今永節が炸裂した。

「今日の勝利はたまたまの方が強いと思う。たまたまで勝ち続けることはできない。次回は『なぜ勝ったのか』ということを、しっかり皆さんに説明できるようにしたい」

 およそ10分間にわたって滔々と語り続けた。その言葉は理屈っぽくもあるのだが、やはり彼の非凡さを感じずにはいられないのだ。

 快投を続ける左腕・岩貞祐太と投げ合った試合を振り返る中で、今永が四球を選んだ2回裏の打席に話が及んだ。2アウト一、二塁の場面。今永は8球粘った末に四球を選び、続く桑原将志の2点適時打を呼び込んだ。

バッターから見える自分の姿も意識。

「2ボールから2-2のカウントになった時、もし僕がピッチャーの立場だったら、何をされるのが嫌かなって思ったんです。僕の打力と岩貞さんの球の力を考えれば打っても絶対に詰まらされる。だったら球数を投げさせて、フォアボールをもぎ取ろうと。相手(投手)の気持ちになってやれたかなと思います」

 そして、3点の援護をもらって投げることとなった自身のピッチングを振り返った。

「リードしていると守りに入ってしまう部分があるので、自分を客観的に見ようと。3点ある、フォアボールを出してしまった。もしこの場面を自分がテレビで見ているとしたら、別にそれぐらいで慌てることないって思うじゃないですか。そうやって見ている側の気持ちになれたので落ち着いていけたのかなと思います」

 打席では相手投手の気持ちになり、マウンドでは「テレビを見ている自分」の気持ちになったというのだ。さらに「バッターから見える自分の姿も意識している」という今永。こうした想像力の豊かさは、プロの投手として活躍していくうえで大きな武器になるのではないだろうか。

【次ページ】 「新人離れした新人」たる最大の所以。

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今永昇太
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