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「理想の中小クラブ」の経営手法。
ビジャレアルの悲願、またも潰える。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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posted2016/05/12 10:30

「理想の中小クラブ」の経営手法。ビジャレアルの悲願、またも潰える。<Number Web> photograph by AFLO

昨年のスターを売却し、新戦力でつかんだリーガ4位+ELベスト4。ビジャレアルの育成力は際立っている。

資金力を考えれば大成功のシーズンではあるが。

 その一方で、パワーや高さで上回るリバプールのようなライバルに対し、ビジャレアルはこれまでもたびたび脆さを露呈してきた。それは事実だ。

 だが過去4度の準決勝で敗れたライバルのうち、アーセナルを除く3チームがタイトルを獲得している。ベスト16で王者セビージャに敗れた昨季のELなども含め、ビジャレアルが要所でことごとく組み合わせに恵まれなかった印象もある。

 クラブの資金力やチームのメンバー構成を考えれば、リーガでの4位確保と並行してELでも4強入りを果たした今季は、大成功のシーズンだと言える。

 だが悲願の初タイトル獲得に並々ならぬ意欲を燃やしていた彼らにとって、またも準決勝止まりに終わった現実を受け入れるのは簡単なことではないはずだ。

「ここまで近づき、可能性が現実的にあっただけに辛いよ。チームはファイナル進出へ向けた希望と野心に満ちていたから」

 試合後、力なく心境を語っていたキャプテンのブルーノは、しかしこうも言っていた。

「このチーム、会長、ファンはタイトル獲得に相応しい。新たなチャンスが訪れ、それをものにできるよう、俺たちは戦い続ける」

 2000年の1部昇格以降はほぼ毎シーズン上位争いに加わり、ヨーロッパの舞台でも躍進を繰り返し、2部に落ちてもブレることなくすぐに這い上がってきた。

 今季はレスター・シティのプレミアリーグ制覇が世界中で話題になったが、人口僅か5万人ちょっとのホームタウンに2万5000人収容のスタジアムを持つ町クラブは、かれこれ16年にもわたって、金に支配されて久しいフットボール界の常識を無視した痛快な躍進劇を見せ続けてくれている。

 そんな彼らに対し、フットボールの神様はそろそろご褒美をあげても良い頃だと思うのだが、いかがなものだろうか。

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ビジャレアル
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