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セナの事故から22年、新たな安全策。
「これがあればアイルトンは……」 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2016/05/08 10:00

セナの事故から22年、新たな安全策。「これがあればアイルトンは……」<Number Web> photograph by Getty Images

レッドブルがお披露目した、保護装置。バーニー・エクレストンは導入に反対しているが果たして……。

ロズベルグ、バトン、アロンソは推進派。

 2016年シーズン、開幕から4連勝し、タイトル争いのトップに立っているニコ・ロズベルグは、それでも反対論者へ安全性向上の重要性を次のように説く。

「過去60年間、安全性が向上されてきたとき、F1界は常に同じような議論が行われてきたと思う。しかし、いずれもそれら否定的な意見よりも安全性が優先され、F1は安全を手にすることができ、いまがあるということを忘れてはならない」

 グランプリ・ドライバーズ協会のディレクターを務めるジェンソン・バトンも、コクピット保護装置の導入に積極的だ。バトンには特別な思いがある。それは、アメリカのインディカーでカート時代の友人が、前車の飛び散ったパーツが直撃するという死亡事故に見舞われていたからである。

「僕もかつてはシングルシーターカーはオープンコックピットのままにすべきだと提唱してきた人間だけど、もう十分だ。もはやF1は1970年代ではないのだから」

 セナを尊敬してやまないフェルナンド・アロンソも、コクピット保護装置推進派だ。

「シングルシーターカーのDNAや装置の見た目よりも優先されるべきものがある。それはドライバーの安全性だ。もう、モータースポーツに悲劇のヒーローなんていらない。ここ数年、あまりに多くの事故や出来事が起きてしまった。僕はこの先、レース中の事故で誰も失いたくはない。そのために必要な装置だというなら、迷わずそれを導入するべきだ」

もし22年前にコクピット保護装置があれば。

 ロシアGPの決勝レース前夜、FIAのスタッフとコクピット保護装置について話す機会があった。あるスタッフはこう言った。

「もし、22年前にコクピット保護装置があれば、アイルトンは死なずに済んだ……」

 その言葉の意味を、コクピット保護装置反対論者は、真剣に考えるべきだろう。

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