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安打は減っても、実は出塁率は向上。
秋山翔吾が目指す「1番打者」の姿。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2016/05/05 08:00

安打は減っても、実は出塁率は向上。秋山翔吾が目指す「1番打者」の姿。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

昨年首位打者を争った柳田とともに、秋山の調子も上がりきらずにいる。この徹底マークも、一流打者の宿命だ。

出塁率よりも、極端に安打にこだわった昨季。

 昨季の秋山は「1番打者=出塁」という至上命題よりも、極端なくらい安打にこだわっていた。

 というのも、昨年シーズンが開幕した頃の秋山は、レギュラーが約束された選手ではなかったからである。「このまま結果が出なければ、野球選手として何の取り柄もないまま終わってしまうかもしれない」という危機感を抱いていた秋山は、1番打者としての役割よりも、目に見える「結果」を残す必要を強く感じていた。

 だから秋山は、「ヒットを打つことが何より出塁率につながる」とヒットを打つことに専念し、そのため、ボールを見て行くことより積極的に打つ姿勢になっていたわけである。

 しかし、2016年は置かれた立場が違う。

 勢いを買われて1番を任されるのと、実績に基づいて期待とともに任された1番の今季では、秋山に課された役割はかなり異なっている。

 それを本人も承知しているからこそ、秋山はその新たな役割に適応しようとしているのだ。

「今の僕は四球が増えたけど三振も増えている」

 今の成績を、秋山はこう分析している。

「去年は自分が結果を出さないといけなかった。今年は去年の成績があった上で1番を任されているので、積極的に打ちに行くだけじゃだめだと思っています。そういう意味では、去年より視野が少し広がっているのかなと。初球で行った方がいいのか、相手投手のその日の調子がどうなのか、とか。積極的に打つことだけを考えることはなくなりました」

 秋山が野球選手として成長し続けるのには、現状に満足をしない性格の影響が大きい。自分のプレーについて客観性を持って分析できる素養は、もしかすると安打以上に特筆すべき才能といえるかもしれない。

「去年のスタイルを全て捨てて、四球が多く出るような方向に行くのは難しいと思います。というのも、たとえ四球が出るようにして四球が増えたとしても、打率.250で納得できるかというとそういうわけじゃない。打つことも見せないといけないし、積極的な姿勢を見せて行かないと相手投手も怖がらずに投げてくるわけですから。実際、今の僕は四球が増えましたけど、三振も増えている。これが改善されない限りは、いい方向に進んでいるとは言い切れないですね」

 新たなスタイルで生まれた新たな課題さえ、秋山はすでに掲げて改善に取り組んでいるのだ。

【次ページ】 バットマンとしての“次のステージ”がある。

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