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「サー・クラウディオ」の声も!?
レスターを導く“好人物”ラニエリ。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byPlumb Images/Leicester City FC via Getty Images

posted2016/04/29 11:00

「サー・クラウディオ」の声も!?レスターを導く“好人物”ラニエリ。<Number Web> photograph by Plumb Images/Leicester City FC via Getty Images

選手を「息子たち」と呼ぶラニエリ。3月14日、オーバーヘッドでゴールを決めた岡崎慎司をハグで出迎えた。

コメディ俳優と印象がダブる!

 只でさえ筆者は、短めの白髪に丸い眼鏡をかけて微笑むレスター新監督に、映画俳優としては『花嫁のパパ』などのヒット作がある元スタンダップ・コメディアン、スティーブ・マーティンの姿を重ねていた。

 親しみと少しばかりの皮肉を込めて記者陣を「人食い鮫」と呼び、開幕前の解雇予想に話が及べば「よ~く覚えているぞ」と言って笑顔でチクリと差し、来季CLへの出場確定には「ディリ・ディン、ディリ・ドン、カモーン!」と意味不明な気勢を上げたりして笑いを誘う姿に、年配のコメディ俳優とダブる印象は強まる一方。

 マンチェスター・シティを敵地で下して優勝候補筆頭の呼び声が高まった25節以降、目標を「40ポイント獲得」、「トップ6」、「CL出場」へとじわじわと高めながらも、頑に「優勝を狙う」とは言おうとしないラニエリの質疑応答は、クスッと笑わずにはいられないデッドパン演技を見るようだった。

出番のないインレルと、カンテの起用。

 もっとも、笑顔を絶やさず、周囲も微笑ませる指揮官の言動が、チームが感じていないはずのない優勝争いのプレッシャーを軽減させていたことは間違いない。

 そして当然ながら、要所では監督として厳しい一面も見せてきた。好例が、出番のないギョクハン・インレルの現状。ベテランのスイス代表MFは、昨夏にチームを去ったエステバン・カンビアッソの代役として、ラニエリ自身が獲得を求めたボランチのはずだった。対して、同じく新加入のエンゴロ・カンテはスカウト陣主導の補強。移籍当初はカンテに半信半疑だったとされる新監督だが、フィットネスの度合いとプレミア適応に必要な機動力の差を目の当たりにすると迷わずに序列を変更。35節までに34試合出場のカンテに対し、インレル起用は5試合に留まることになった。

 27節ノリッチ戦では、そのカンテを含む3名を終盤の10分間弱で代え、FW1名と攻撃的MF2名を投入したベンチワークが、フルタイム間際のゴールによる辛勝(1-0)を可能にした。アウェイでアーセナルに後半戦初黒星をつけられた前節を受けて、ホームでの勝利に拘る指揮官の姿勢が窺えた。やはりホームゲームで、岡崎のオーバーヘッドによる虎の子の1点を守り抜いた30節ニューカッスル戦のハーフタイム中、普段の笑顔が消えたラニエリがチームに檄を飛ばした一件は有名だ。

【次ページ】 指揮官の舌戦や神経戦と無縁という珍しい優勝争い。

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