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シメオネが本当の「神」になるのか。
CL、残り3つの対戦を予想すると……。 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2016/04/21 10:30

シメオネが本当の「神」になるのか。CL、残り3つの対戦を予想すると……。<Number Web> photograph by AFLO

アトレティコをCL上位、リーガ優勝争い常連に育て上げたシメオネ。CLで優勝すればクラブの歴史上はじめてのことになる。

シメオネのスタイルは「歯にナイフを咥えたプレー」。

 それにディエゴ・シメオネほど、下剋上が似合う指揮官もいないと思う。コーチのヘルマン・ブルゴスとの強面コンビは一見するとマフィアにも見えるし、過去には自らのスタイルを「歯にナイフを咥えたようなプレー」と表現している。強大な敵の攻撃に耐え、一瞬の隙を見つけて鋭い刃を突き刺すのは、彼が率いるチームそのものだ。

 また現役時代には、1998年フランス大会という30代後半の僕にとって最も記憶に残るワールドカップで、デイビッド・ベッカムを母国のヒールに仕立て上げたことも印象深い。女性には嫌われたかもしれないが、痛快なマリーシアで優男を退場処分にしたこのシーンは、相手の肝心な部分を抉り取った好例と言えるだろう。

自身のキャラクターをチームに乗り移らせる男。

 マドリードの新聞社に勤める懇意の記者に、シメオネ監督の人物像を簡潔に、と尋ねたら、「偉大な男。現役時代と変わらず、勝利のためにあらゆる手段を講じるファイターだ。選手との対話を重視し、コミュニケーションを欠かさない。怒鳴ることもあるけど、根はとても優しいんだ」と返信が来た。

 フットボールの歴史を振り返れば、自身のキャラクターをそのままチームに反映させることのできる稀有な監督がいるが、間違いなくこのアルゼンチン人もそうだ。戦う姿勢、止めない足、相手を出し抜くことも厭わない賢さ──。それらを言葉と態度で示し、彼に惚れ込んだ選手たちは終了の笛が鳴るまで全力を尽くす。

 クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシが守備に走れば、「エースが献身的にディフェンスをした!」と驚かれるけれど、アントワン・グリエスマンが同じことをしても話題にもならない。もちろん、良い意味で。

 そんなアトレティコが頂点に上り詰めるには、まず、シメオネと同世代のジョゼップ・グアルディオラ監督が指揮を執るバイエルンに勝たねばならない。来季からシティで1500万ポンド(約23億円)もの年俸を受け取ることになるスペイン人指揮官は、契約最終年でバイエルンに3冠をもたらさなければ、失敗とみなされてしまうことを自認している。それだけに重圧も大きいが、経験と総合力で相手を上回っているのは確かだ。

【次ページ】 バイエルンはリーガ勢に2年連続で敗退中。

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