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ネビルの悪夢から醒めたバレンシア。
新米監督と歩んだ4カ月の転落人生。

posted2016/04/14 10:40

 
ネビルの悪夢から醒めたバレンシア。新米監督と歩んだ4カ月の転落人生。<Number Web> photograph by AFLO

背後の文字はウサイン・ボルトの「不可能なことなど存在しない」という言葉。なんとも皮肉である。

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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 ダニ・パレホが蹴り込んだ低く鋭いボールがゴール前でディフェンダーの体に当たり、アルバロ・ネグレドの足元にこぼれる。素早く反応したネグレドの右足に優しく押し出され、ボールがゆっくりとゴールネットに吸い込まれていく――。

 リーガ・エスパニョーラ第32節、ホームにセビージャを迎えた大一番、バレンシアは91分に生まれた決勝弾によって劇的な勝利を手にした。

 総立ちで喜びを爆発させるファンの目前で、殊勲のネグレドを中心に歓喜の輪が広がる。ベンチ前では控え選手たちも飛びつくように抱き合っている。

 まるでビッグタイトルでも獲得したかのように喜び合うその光景を見ながら、ここ数日の間何度もわき上がってきた疑問が再び脳裏をよぎった。

 ギャリー・ネビルとは、一体何だったんだろう?

好調だったのは、初練習まで。

 昨年12月、ヌーノ・エスピリト・サントの解任に伴い、ネビルはバレンシアの新監督に就任した。

 指導者としての実績は3年前から務めているイングランド代表のアシスタントコーチのみで、監督としての経験はゼロ。マンチェスター・ユナイテッド一筋のキャリアを貫いた名選手のため、バレンシアやリーガ・エスパニョーラとの縁は皆無で、スペイン語を話せるはずもない。

 シーズン途中にチームの建て直しを任せられそうな条件を何一つ備えていない新米監督を、「友達だから」という理由で大抜擢した大株主ピーター・リム氏の大胆さにも恐れ入ったが、さらに驚かされたのは謎に包まれていたネビルの手腕だ。

 嫌われ者だった前監督の解任がもたらした歓迎ムードを利用し、自身の初練習を公開して3000人超のファンを集めるなど出足は好調だったが、「ヌーノ解任効果」が見られたのはそこまで。チャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出がかかった就任初戦の大一番では、勝ってヘントが引き分け以下に終わる吉報を待つまでもなく、既にグループ敗退が決まっているリヨンにホームで0-2とあっさり敗れた。

【次ページ】 メディアの追及を巧みに前向きにかわし続けた。

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