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見ていて飽きない試合中の名波監督。
その“イズム”がジュビロに浸透中。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2016/04/09 10:50

見ていて飽きない試合中の名波監督。その“イズム”がジュビロに浸透中。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

足下にズラリと並ぶ給水ボトル。名波監督の激しい給水と飴は、サポーターの間でも有名になっている。

3年ぶりの“J1レベル”にも徐々に適応。

「攻撃的なサッカー」を掲げる磐田は、今シーズン3年ぶりの“J1レベル”に直面して守勢を強いられた。1点差で敗れた第1節の名古屋グランパス戦も、1点差で勝利した第2節の浦和レッズ戦も、ゲームを通じて主導権を握ったのは相手だった。第3節の柏レイソル戦では前半の45分を完全に支配されたが、なんとか2つのゴールを奪ってドロー。我慢して勝点を拾う、そんなゲームが続いた。

 しかし、同じJ1昇格組のアビスパ福岡戦をドローで終えて迎えた第5節、この大宮戦は今シーズン一番と言っていい出来だった。守備では個々に“ポジション回復”の意識が強く、攻守の切り替えに敏感に反応して組織を整えた。大宮のMF岩上祐三の大胆なサイドチェンジに手を焼き、MF江坂任にたびたび縦への突破を許したものの、選手達がピッチの中でそれを感じ、修正しようとする意識は確かに感じられた。

 32分には、最初の決定機を迎えた。新戦力の左SB中村太亮が縦にスルーパスを通すと、走り込んだアダイウトンがグラウンダーのクロスを供給し、ジェイがシュート。これを機に攻撃のリズムをつかみ、前半終了間際の44分には敵陣深くのスローインからアダイウトンがチャンスを演出する。ラストパスを受けた小林祐希の右足シュートがゴールに刺さり、先制に成功した。

 後半に入ると、58分に最終ラインのスライドのミスを突かれて同点弾を喫するが、途中出場の2人、山本康裕と松井大輔が見事に流れを引き戻した。山本は中盤から長短のパスを使い分けてダイナミックに展開し、松井は右サイドでパスを受けると時間を作り、相手DFの意識を引きつけた。彼ら2人がもたらした変化により、試合終盤は磐田の攻勢が続いた。

「残留ラインを考えれば、現実的な数字」

 試合後の会見で、名波はまず、文字どおりのガラガラ声で「声が出ない」と言って記者団を笑わせた。

「大宮とは昨年2試合引き分けて、今回も引き分けたが、3試合の中では一番内容が良かった。選手たちには開口一番、『勝点2を失ったゲームだ』と言いました」

 5試合を終えて勝点6。この成績については意外にもポジティブな評価を口にした。

「残留ラインを考えれば、現実的な数字だと思う。ただ選手たちには、我々が3ポイント取ることで大宮と順位が入れ替わると強調していた。昨シーズンの悔しさを含めて3ポイントに執着しようという中では、残念なゲームだった」

【次ページ】 喜怒哀楽がはっきり出る名波の表情が語るもの。

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名波浩
ジュビロ磐田

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