「でもこれに慣れてはいけない」

　ファームに合流した平沢は、自分とも年が近い香月一也や脇本直人らと、グラウンドで一緒に声を出し、汗を流す毎日になんだかホッとしているようにも見えた。

　ファーム行きを命じられてから約2週間。この現状を平沢はどのように考えているのだろうか。

「（マスコミに追われる）プレッシャーはなくなってはきていますし、でもこれに慣れてはいけないと思っているので、一日でも早く一軍で活躍できるような、土台作りをしっかりしていければいいなと思ってやっています」

　その視線は真っ直ぐに前だけを向いている。

　前述した守備の課題についても、彼はこう答える。

「最初よりはだいぶ安定してきたというか、そういう感じはあるのでそこをもっと上達できるようにしたいです」

鈴木大地の1年目よりも上手い。

　土のグラウンドと人工芝の違いはあるが、守備に関しては高校時代の彼が見せていたダイナミックで、かつ滑らかなボール捌きに戻りつつある。急激な環境の変化も少なからず影響を与えていたのかもしれない。

　彼の将来は悲観的に見るものではけっしてない。

　佐藤コーチも次のように平沢を評す。

「鈴木大地とかが1年目のときも僕は見てきたけど、それよりも（守備は）上手いですよ。大地の場合は大学を出てから入ってきたけど、その時点での大地よりも肩はいいし、素質的にも西岡とダブる部分もあるし……。ただ、西岡の場合は足のスピードがあったから、その辺でタイプの違いはあるけども、あとは変わらないです。本当にこれから本人がどれだけ意識しながらやれるかにかかっていると思っています」

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