結局、独特の球筋で8回までノーヒット。

　あんまり暑いので5回まで見たらギブアップと決めていたのに、巨人二軍が原樹理からヒットを打てないので帰れなくなった。

　結局、昼さがりのドロッとした暑さの中で9イニング投げた原樹理。

　巨人二軍を完全に抑え、一見平凡に見えてとても打ちにくい球筋と、グラウンドレベルなら40℃以上の猛暑もへっちゃらの心身の強靭さを証明して、最後の秋のリーグ戦に向かっていった。

「投げるほど調子が上がってくるのがわかるんです。投げ込みですか？　200球、250球ぐらい、しょっちゅうやってますから」

　リーグ戦の完投のあとの囲み取材で、風呂あがりみたいなさっぱりした顔で、そんなことを言っていたことがある。

　東洋大・高橋昭雄監督は投げ込んで、投げ込んで、投手を仕上げてくる監督さんだ。ハマったようにも思う。

3連投で22イニングを投げ、たった1失点。

　確かに4年生の時の原樹理はすごかった。

　まず春のリーグ戦で4完封の8勝。さらに秋は6勝して防御率はいずれも0点台に1点台。その奮投が一部昇格につながった。

　中でも秋。宿敵・青学戦の原樹理のピッチングには、なにか“降りてきたもの”を感じないわけにはいかなかった。

　2勝1敗で勝ち点を奪った3試合。

　原樹理は完投、4回3分の1のロングリリーフ、完封と3連投の21イニングあまりをわずか1失点にしのいで、2部優勝に加速をつけた。

　すべてはこの日のために。まさにそんな意気込みが腕の振りの1球1球にほとばしっていた。

　右の強打者相手にはシュートで胸元、足元を突き、ムッとして態度に示す打者には、マウンドを降りながら捕手からの返球をむしり捕るようにし、逆に威嚇していた。

　左打者には今度はカットボールで同じポイントを突く。踏み込めないようにしておいて、シュートを振らせて芯を外した。

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