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“ブルペン嫌い”金子千尋が今年は?
例年以上の球数が示す本当の状態。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2016/03/09 10:50

“ブルペン嫌い”金子千尋が今年は?例年以上の球数が示す本当の状態。<Number Web> photograph by Kyodo News

金子千尋と故障の付き合いはプロ入り前から。だからこそ自分の体調の見極め方は熟知している。

ブルペンで金子が「無理に」しゃべる理由。

 金子の昨季初登板は5月23日。開幕で大きくつまずいていたオリックスは、その時点ですでに借金を13も抱えていた。最後の頼みだった金子も、復帰登板は3回6失点で降板。9月には肩に違和感を生じ、再び戦列を離れた。最終的に7勝6敗に終わり、「自分が復帰しても、チーム状況がうんとよくなる、というふうにならなかった」と悔やんだ。

 思うように投げられない1年を経験し、今年に向けて不安があるのは当然だ。

 ただ、ブルペンで投げる今年の金子の姿には、不安や悲壮感といったものは感じられなかった。

 審判にコールしてもらいながら119球を投げた今年2月17日は、「あー! 高い」と大声で独り言を言ったり、「今の、ボールからボール?」と瓜野純嗣ブルペン捕手と言葉を交わすなど、金子は雄弁だった。

 途中からはコーチに打席に立ってもらい、瓜野ブルペン捕手に「テキトーに言って。何でもいいから」と球種を言うよう頼んだ。

「僕はブルペンが嫌い、というか好きじゃない。だから、自分の中でしゃべりながらやったり、審判との駆け引きをしたり、そうしないと飽きるんですよ。自分で無理に楽しくしているんです」

 そう言うが、「無理に」とは思えないほどその日のブルペンでの金子には笑顔が多く、終始和やかな雰囲気だった。

 ちょうど1年前のピリピリとした空気を思えば、この明るさこそが、今年の調整の順調さを物語る。

練習試合では打たれても全く気にしない。

 その後、2月21日にシート打撃に登板し、25日には韓国・斗山との練習試合に先発。金子が2月に実戦登板するのは2010年以来のことだ。

 そして、オープン戦初戦となった3月2日のロッテ戦に先発登板。3回を投げ1点を失ったが、「今日は3イニングと決まっていたので、その中でやりたいことをやろうとした。正直シーズン中と同じ配球で投げていないので、打たれたことに対しては何とも思っていません。ある程度、自分が投げたい感じで投げることができました」と手応えを語った。

 この日は基本的にストレート、カットボール、シュート、スライダーだけで組み立て、打者の反応を見た。

 ただ翌日には、「試合で投げている映像を見直すと、フォームの部分でもうちょっとかな、というところもあった」と微調整の必要も口にした。

【次ページ】 エースが順調、という事実でチームは落ち着く。

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金子千尋
オリックス・バファローズ

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