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「いい記録で泳げるんじゃないか」
33歳になった北島康介が期待する事。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2016/03/07 10:30

「いい記録で泳げるんじゃないか」33歳になった北島康介が期待する事。<Number Web> photograph by AFLO

北島は「必死の思いでやる。水泳人生のラストチャンスだと思う」と語り、高地合宿へ向かった。

野村忠宏との対談での印象的だった一言。

 1つは、“悔しさ”だろう。

「もう少しできたとの気持ちが今は強い」

 やはり、日本選手権での言葉だ。「もうここまで」とは思わなかった。だから結果が悔しさとなった。

 そして、もう1つ支えがある。

 昨夏引退した柔道家、野村忠宏と北島康介の対談の司会を務めた。そのときのひとことが象徴的だ。

「またいい記録で泳げるんじゃないか、そういう気持ちを持っていますけどね」

 自身の可能性を信じているからこその言葉だった。

 思えば華麗な経歴の裏には、苦しいときも少なくなかった。故障もしばしばあったし、ライバルの出現にプレッシャーを感じることもあった。苛立ちを見せたこともある。

 そうした時期を乗り越えて、残してきた華々しいキャリアだ。それこそが北島の強さでもある。

 昨秋はワールドカップに出場し、年が明けると1月は中旬から下旬にかけて3週連続で大会に出場。強化に励んできた。

今回は2位、100mの派遣標準記録まではあと1秒。

 しかし、迎えたコナミオープンは、大会の前週に風邪をひき、万全な体調で臨むことができなかった。200mは2分10秒88と伸び悩み4位。100mでも予選は1分1秒30とよくなかったが決勝では1分0秒57で2位。1月の大会よりタイムを縮めた。

「予選から少しでも修正してタイムを上げようと」

 200mからの悪い流れの中、懸命に立て直しての100m決勝の泳ぎには北島らしさがあった。

 リオデジャネイロ五輪代表をつかむには、日本選手権で2位以内となり、派遣標準記録を突破しなければならない。100mは59秒63、200mは2分9秒54だから、まだ少し距離がある。

 それでも、北島は言う。

「今は期待しかありません」

 2月23日には、スペインの高地合宿へ出発した。

「初心に戻って、代表をつかむという強い気持ちで選考会に挑みます」

 自分の可能性を信じるスイマーの、大きな挑戦の行く末を見守りたい。

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