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2強時代を終わらせたアトレティコ。
レアルに体力、気力、戦術で完勝。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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posted2016/03/05 10:30

2強時代を終わらせたアトレティコ。レアルに体力、気力、戦術で完勝。<Number Web> photograph by AFLO

ジダンに対して、監督としてのキャリアの違いを見せ付けた形のシメオネ。順位もレアルに勝ち点4差で堂々2位につけている。

「バックパスを出さない」という現役時代からの信念。

 だが一方で、シメオネはジレンマに陥った。

 フォワードを1人増やすには中盤を1人減らさねばならない。しかし4人が並ぶ中盤は、前線から最終ラインまでをコンパクトにまとめるアトレティコサッカーの肝であり、長所である。また、現役時代から大事にしてきた独自のコンセプトを教え込んだ、自分の分身的セクションでもある。

「間違っているか正しいかわからないが、『バックパスを出さない』を俺は常に念頭に置いてきた。監督としても、特に中盤の選手にはそうさせている。敵ボールを奪って攻めに転じるとき、まず探さなきゃいけないのはチームで一番巧い選手であり、周りを動かす選手であり、ゴールゲッターだ。我々の場合は、コケかグリエスマン。中盤が最初からサイドバックやセンターバックに繋ぐことを考えていたら、攻撃が進展しないだけでなく時間を無駄にしてしまう」

 決戦を前にシメオネはマドリーの現状を分析し、最終的に4-4-2を選んだ。ベイルがおらず、クリスティアーノ・ロナウドの脅威も薄まっているいま、マドリーのサイドアタックは怖くない。左右のスペースを放棄し、中央を固めて中盤を制することができれば勝機はきっとやってくる――。

 同時に、4-3-3を常用するマドリーが、ホームゲームで、“アトレティコごとき”にわざわざ陣形を変えてくることはなかろうという読みもあったに違いない。

3年連続ベルナベウでマドリーに勝利。

 果たして、数的優位も手伝って、アトレティコは中盤を押さえ、試合をコントロールしてみせた。

 そして、シメオネと彼のチームは、ベルナベウでのマドリー戦3年連続勝利というリーガ史上初の偉業を成し遂げた。

 順位だけでなく、あらゆる面でバルサとマドリーの間に割って入った感のあるアトレティコだが、キャプテンのガビはそれを否定する。

「チームのレベルがマドリーやバルサに劣っている。うちにはメッシもクリスティアーノもネイマールもスアレスもいないからだ。アトレティコのいったい誰がメッシやネイマールのように試合を決めてくれるんだ? グリエスマン? いまのところメッシのレベルには達してない。それが現実だよ」

 しかし、それでいてマドリーを蹴散らし、バルサを追いかけられるチームも他にない。

 シメオネのアトレティコは強い。

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