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スーパーラグビー、南十字星の煌めき。
~サンウルブズが挑む大舞台~

posted2016/02/19 07:00

 
スーパーラグビー、南十字星の煌めき。~サンウルブズが挑む大舞台~<Number Web> photograph by Getty Images

昨年の決勝、ニュージーランドのウェストパックスタジアム。34500席を観客が埋め尽くした。

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小林深緑郎

小林深緑郎Shinrokuro Kobayashi

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 トップリーグのトヨタ自動車ヴェルブリッツに所属している、小山のような南アフリカ人FWコーチを知っているだろうか。ピーター・オス・デュラントは国代表ボクスの左PRとして、W杯に3回出場し、2度の優勝に貢献したレジェンドだ。現役時は身長190cm、体重は135kg。OS(オス)は愛称で英語ならOX、雄牛の意味である。スーパーラグビー(SR)でもチーターズなどで活躍したオスは、仕事量の多い働き者で、驚くべきことに引退直前の35歳当時でも80分間フル出場ができた。

 南半球3カ国のチームが戦うSRには、他にも126kgのコーニー・ウェストハイゼン(シャークス)のように80分間戦える超大型PRが存在するが、北半球には見当たらない。それはなぜか。要因のひとつにSRのプレースタイルがある。

 ボールを頻繁に動かすゲーム展開の多いSRでは、ランやパスによるトライを狙うプレーが中心となる。1試合平均で約5トライも叩き出す攻撃的なラグビーなのだ。なぜこうしたスタイルになったのかというと、スーパー12(現SR)が'96年のプロ化とともに始まったことに一因がある。いまや世界120カ国で放映されるSRは、多くのファンを楽しませるために、攻撃的でスペクタクルなプレーを求められたのだ。

 当然ながらフィットネスの強化が必須となり、トレーニング量も増した。FW第一列にとっては地獄のような日々だっただろうが、結果として80分間出場できる超大型PRが誕生したのだ。

“見巧者”でなくとも大いに楽しめる。

 しかし観客側からすれば、SRはラグビーに造詣が深い“見巧者”でなくとも、大いに楽しめるプレーが繰り広げられると言える。ネヘ・ミルナースカッダー(ハリケーンズ)が、キレのあるステップを踏み、タックラーに指一本触れさせずに、小気味よくトライを奪うシーンなど、思わず居住まいを正したくなる。193cmのFB、イズラエル・フォラウ(ワラタス)がオージーボールの経験で身につけたハイボールキャッチは、ラグビーの空中戦を三次元アートにまで高めたと言っていい。

 さらに、SRは最高のエンターテインメントを提供するとともに、各国代表選手が選抜される場としての役割も持つ。トップクラスの各国代表選手はもちろんのこと、代表入りを目指す若手もしのぎを削る。つまり、毎試合が真剣勝負なのだ。また、かつて代表で活躍した、いぶし銀のベテラン選手も加わってバラエティーに富んだチームが揃っている。だからこそ、選手たちは一戦ごとに大きな経験値を積めるのである。

【次ページ】 南半球の強さとSRの存在は無関係ではない。

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