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F1を去る「暴れん坊」マルドナド。
過激なクラッシュすら魅力的だった。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2016/02/15 10:30

F1を去る「暴れん坊」マルドナド。過激なクラッシュすら魅力的だった。<Number Web> photograph by Getty Images

2012年のスペインGPで唯一の勝利を挙げたマルドナドは、表彰台でアロンソとライコネンに担ぎ上げられた。

おとなしくなったドライバーの中で、際立つ異彩。

 しかし、そんなマルドナドの走りを支持する者も少なくない。昨年、メキシコGPとブラジルGPに取材に来ていたコロンビア人のジャーナリストは、こう話す。

「最近のF1がつまらなくなっている原因のひとつは、ドライバーがおとなしくなっていることだと思う。コロンビア人だから言うわけじゃないけど、F1にはモントーヤのような強いキャラクターが必要だ。モントーヤも『暴れん坊』と揶揄されていたけど、人気はあった」

 ファン・パブロ・モントーヤは2001年から2006年までウイリアムズやマクラーレンで活躍していたコロンビア人ドライバーで、コース上では何度もミハエル・シューマッハーと激しいバトルを演じただけでなく、コース外でもジャック・ビルヌーブらと舌戦を繰り広げて、多くの話題を提供してくれた熱いドライバーだった。

 メキシコGPとブラジルGPに取材に来たコロンビア人ジャーナリストが、2つのグランプリで唯一、単独インタビューしたのは、マルドナドだった。マルドナドには、そんな魅力があった。

 もうひとつ、マルドナドの存在をF1界で際立たせていたのが、持参金の多さだった。

ベネズエラの大統領が作った企業から52億円の支援!

 その額、なんと年間4000万ユーロ(約52億円)。持参金といっても、これはマルドナド個人のお金ではなく、ベネズエラの国営の石油会社であるPDVSAからの援助。PDVSAはチャベス前大統領が創設した会社で、モータースポーツに造詣が深かったチャベス前大統領はモータースポーツを通して、国力を世界にアピールしたかったと言われている。

 確かに現在のF1で、マルドナドほどの持参金を持ち込んでいるドライバーは、他にいない。だが、持参金はいまに始まったことではなく、国家が特定のスポーツに資金を援助しているのも、なにもベネズエラだけの話ではない。

 今回、マルドナドのシート喪失の詳細は明らかにされてないが、その持参金が支払えなくなったことが原因だったことは、ほぼ間違いないだろう。ただ、それはベネズエラ政府がモータースポーツやマルドナドに年間4000万ユーロの価値がなくなったと判断したからではなく、昨年末から続いている急激な原油安による、国内経済のインフレが主因だと考えられる。

【次ページ】 アロンソを逆転した、忘れられない走り。

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