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決勝で戦う日本と韓国は似た者同士?
「自分達は弱者である」という思想。 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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posted2016/01/29 11:00

決勝で戦う日本と韓国は似た者同士?「自分達は弱者である」という思想。<Number Web> photograph by AFLO

水原所属のクォン・チャンフンがこの世代のエース。中盤に中心選手がいるのも日本との共通点だ。

欧州組もいるし、育成の成果も出ているが……。

 なぜ戦前の評価が低かったのか。思えば、妙な話でもあった。

 今回の韓国、メンバーの「格」や「育ち」だけをみていけば、「史上最強」というにもふさわしい顔ぶれだからだ。23人のエントリーメンバーに、欧州組がふたりいる。10番のMFリュ・スンウ(レバークーゼン/ドイツ)と20番のFWファン・ヒチャン(ザルツブルク/オーストリア)だ。

 過去には欧州クラブとの招集調整問題もあったが、2012年ロンドン大会のアジア最終予選メンバーには、海外組は金英権(当時大宮)らJリーグ組が6人含まれただけだった。

 さらに今大会の世代は、大韓サッカー協会が'90年代後半から取り組んできた、育成システム改革の恩恵を受けている。

 韓国サッカー界はフランスワールドカップでの惨敗を機に、既存のエリート・スパルタ主義を改める努力をしてきた。現在の選手たちは、小学校からリーグ戦を戦い、一部強豪校に通った選手たちは10代からプロチームとの連携により合理的な指導を受けてきた。ロンドン五輪で、唯一'91年生まれで主力としてプレーしたチ・ドンウォン(アウクスブルク/ドイツ)がこの第一世代だったから、今回が初めての「合理的育成世代」ともいえる。また、日本が出場機会を逃した2013年U-20ワールドカップトルコ大会に出場し、ベスト8入りを果たした世代でもあるのだ。

ストライカーの不在と、それを埋める中盤のエース。

 そういった世代の評価が低かった理由は、次の一点に尽きる。

「フル代表に入ってくるような、突出したスターがいないこと」

 ストライカーで比較すると分かりやすい。過去の五輪を見ると、'96年大会にはチェ・ヨンス、'00年大会にはイ・ドングッ、'04年大会にはチョ・ジェジン、'08年大会ではパク・チュヨンといった素材がいた。

 今回のファン・ヒチャンは海外組と記したものの、昨年は2部リーグにレンタルで修行に出されていた身。188cmの大型FWキム・ヒョンは2013年U-20ワールドカップに出場したものの、国内リーグでは鳴かず飛ばず。最強チーム全北で出場機会を得られず、他チームに放出されてしまった。今回の代表チームでも「ゴール数が少ない」という批判を受け続けたが、シン監督は起用し続けてきた。

 いっぽうで、今大会のチームで唯一フル代表で立場を築きつつある存在が、22番のMFクォン・チャンフンだ。柔軟な技術を誇るレフティーは、昨年8月の東アジアカップでA代表初キャップを刻むと、以降のワールドカップ2次予選でも出場チャンスを得た。ここまで5試合出場4ゴールを記録している。

 個人としては、この選手こそが日本にとって最も警戒すべき存在だ。26日の準決勝では、89分に決勝ゴールを挙げた。「役者がきっちり仕事をしている」という点、注意を払わなければならない。

【次ページ】 「150通り」と監督が語る戦術のバリエーション。

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