一軍はやっぱり“異次元”の体験。

　練習後、吉田は言った。

「僕のは“カンカン”だけど、糸井さんのは “バーン！”という破壊音みたいな感じで、全然違いました。もっと体の強さが必要だし、強く、シャープに振ることも必要。振り込んで、力をつけて、体ももっと大きくしたいです」

　そして、「緊張したけど、やっぱりこういう緊張感の中で練習しないとうまくならないですね」と充実感を漂わせた。

　奥浪は、小谷野の守備に感銘を受けていた。

「とにかく速いです。捕ってからも速いし、打球までの反応もバーンと速い。走るスピード自体はそれほど変わらないと思うんですけど、僕が絶対追いつかないなと思うような打球でも普通に追いついてしまう」

　秋季キャンプでも一緒にやりたい、と奥浪は早くも次の機会を待ちわびていた。

ホームランバッターに求められるもの。

　創志学園高からオリックス入りした奥浪は、身長176cmで体重約100kg。愛嬌のあるえびす顔で、ホームランバッターを絵に描いたような風貌だ。入団当初から、「自分からホームランを取ったら何も残らない」と言い続け、ホームランに並々ならぬこだわりを持っている。

　奥浪の入団時、二軍を担当していた北川コーチは、「粗いけど柔らかさを持っていて、いい選手だなと思った。リストや体の使い方がうまくて、センスのあるスイングをしていた」と当時の印象を振り返る。

　昨年はファームで8本塁打。その数字に本人は納得はしていないが、「飛ばすことだけの能力なら、結構自信を持っている。一軍に上がるためには、調子がいい時期をどれだけ維持できるかが勝負だと思う」と語る。

　福良監督も打撃面は高く評価する。しかし「やらなきゃいけないことは多い」と釘を刺す。特に課題となるのが守備だ。奥浪自身もそれは重々承知で、秋季キャンプでは一緒にサードを守った小谷野にアドバイスを求めた。

「打球に速く反応するために、待つ時の姿勢や構える際の目線の位置などいろいろ教わって、すごくよかったです」

　ただ、小谷野から見ればまだ物足りない様子。「まだまだ伸びしろのある魅力のある選手だけど、もっと守備に興味を持ってほしい。まだ“こだわり”と呼べるほどじゃないから」と注文をつけた。

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