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「特別な舞台」全日本選手権。
羽生、宇野、浅田――それぞれの胸中。 

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photograph byAsami Enomoto

posted2016/01/07 12:05

「特別な舞台」全日本選手権。羽生、宇野、浅田――それぞれの胸中。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

286.36点で他を寄せ付けない優勝を決めるも、ミスが相次ぎ、“悔しい”全日本四連覇となった。

「今までの試合とは違った精神状態でした」

 しかし、翌日のショートプログラム。ショパンのバラード第1番。

 冒頭の4回転サルコウで、まさかの転倒──。

 ミックスゾーンで演技の様子をモニターで見ていた報道陣からは「ああっ」と悲鳴に似た声が漏れ、どこからか「ついに……」というつぶやきが聞こえてきた。

 NHK杯、GPファイナルとノーミスを続けてきた王者が久しぶりに見せた失敗。「いまの羽生でも、ミスすることがあるのか……」という、落胆とはまた違った種類の感慨が、その場にただよっていた。

 その後の囲み取材では「今までの試合とは違った精神状態でした」と語った羽生。この時、彼はどういう精神状態にあり、そしてそこからどう翌日のフリーへと向かい、そして大会4連覇へと気持ちをつないでいったのか?

宇野の、ある「攻めの選択」。

 また、別次元を行く羽生ともう一人、3月に行われる世界選手権の代表の座を勝ち取ったのは、今季シニアデビューを果たした宇野昌磨だった。NHK杯3位の無良崇人に初のGPファイナル進出を果たした村上大介、NHK杯5位の田中刑事らを抑えて2位に入った宇野は、結果を受けてこんな言葉を残している。

「逃げずに終われて、満足しています」

 フリーでは冒頭の4回転でミスがあったが、そのあと宇野はある「攻めの選択」をして演技を終えていたのだ。「今回の選択が正しいと思う人は少ないと思います」と前置きしながらも、語った宇野の言葉は、厳しいシーズンを戦い続けてきた選手だけが持つことができる「矜持」のようなものさえ感じさせた。

 羽生の心中、宇野の選択の詳細については、ぜひ野口氏のレポートをお読みいただきたい。

 一方、190点越えの選手が4人とハイレベルな争いになった女子。ショートもフリーもほぼ完璧な演技で、212.83点の自己ベスト(国内参考記録)をマークして連覇を果たした宮原知子の自信に満ちた笑顔や受け応えが印象的だったが、もう一人、観客の注目を集めたのは浅田真央だった。

【次ページ】 まさかの5位発進から持ち直す、浅田真央の強さ。

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