“山本昌さん”が球界に遺した物の大きさを。

　プロ野球の世界に限らず、「人を蹴落とすくらいの性格にクセのあるヤツ」が成功するという何の根拠もない風説が流れるときがある。「エネルギーを持っている」と捉えるなら分かるが、そこを人格と結びつけることは大きな間違いだろう。

　今季、たくさんの名プレイヤーがプロ野球界を去った。

　彼らのプレーを間近で見てきたファンにとって、とてもさみしい瞬間であるが、選手の引退に際して、我々が忘れてはいけないのは、彼らが遺したものをどのように世に伝えていくかだ。

　誰もやったことがない記録を達成した男は球界に何を遺したのか。生き字引のような現役を続けた山本昌の姿勢からは我々が学ぶべきものは多くある。

　速い球を投げることなど、その人物を語る上ではほんの一部に過ぎない。

　それ以外の生きる姿勢や振る舞い、人としての中身をいかに見ていくかではないだろうか。

　引退後にも変わらぬ“山本昌さん”の振る舞いをみて、大事なものが何か、改めて考えさせられた。