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自分のプレーができないときに――。
青山敏弘の変貌を生んだ「自分の幅」。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2015/12/25 10:40

自分のプレーができないときに――。青山敏弘の変貌を生んだ「自分の幅」。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

CWCでも3位に入り、広島にとっては充実のシーズンになった。その中心に青山がいたことは間違いない。

ザック「トシ! オメデトウ。君はいつも最高だよ」

 やれないのなら、やれることからやる。やり切る。やれることを重ねていくことで、チームに流れを引き寄せるばかりでなく、「ボールを持ったときに何ができるか」という己の流れにも持っていった。

 W杯とJリーグではレベルも舞台も違う。ただ、彼は与えられた場で「現実」を変えていこうとした。尊敬する森保一監督のもとで、その信念を強く抱き、やり切ってみせたのが彼の2015年シーズンであった。

 チャンピオンシップを制した日、エディオンスタジアム広島にはテレビ中継のゲスト解説でアルベルト・ザッケローニがイタリアから訪れていた。祝福の言葉をおくろうと、セレモニーを終えてピッチからロッカールームに入る手前で青山を呼び止めた。

「トシ! オメデトウ。君はいつも最高だよ!」

 遠藤保仁の後継者になる存在と見込んだ男の成長を目にできたことを喜んでいた。

サムライなら、広島にいる――。

 JリーグアウォーズでMVPに選出された青山はトロフィーを手に、真っ直ぐな言葉でスピーチしている。

「僕は決してうまい選手ではありません。自分では下手だと思っています。ただ、サッカーに対する情熱、試合に対する思い、気持ちでは絶対に誰にも負けないという思いでサッカーをやっています」

 情熱と気持ちをたぎらせ、チームを助け、チームを思い、チームを勝利に向かわせる。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「サムライ」という言葉がお気に入りだそうだ。ならば測るべきは体「脂肪」よりも、心身の「至剛」。

 サムライなら、広島にいる――。

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