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チェルシーがモウリーニョを解任。
アザールの心が折れた“ムチ”過剰。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2015/12/18 13:00

チェルシーがモウリーニョを解任。アザールの心が折れた“ムチ”過剰。<Number Web> photograph by AFLO

2度目のモウリーニョ政権は、1度目の成功を取り戻すには及ばなかった。

メンバー落ちに加え、報道陣の前でも問題を公言。

 アザールが今季プレミアで初のスタメン落ちを経験したのは9節アストンビラ戦(2-0)。他の選手では、CBのジョン・テリーが2節マンチェスター・シティ戦(0-3)でハーフタイム中に交代を命じられ、ボランチのネマニャ・マティッチは8節サウサンプトン戦(1-3)で再交代の屈辱を味わってはいたが、攻撃陣で不動メンバーから真っ先に外されたのはアザールだった。より不調が著しいジエゴ・コスタとセスク・ファブレガスよりも先だった。

 その上、モウリーニョは試合後の会見で「失点が止まらなかったからだ。ボールを支配していない時にクオリティは無用の長物。必要なのはハードワーク」と、アザールを先発から外した理由を説明している。

 傍目には酷と映ったベンチスタートだけで、改めて守備面の意識を促すための薬としては十分だったとすれば、報道陣に対しては「軽い怪我」や「休養」といった罪のない嘘をついてアザールを気遣っても良かった。

 もちろん、アメも与えてはいる。9月のアーセナル戦(2-0)前には「プレミアの現役最高」とアザールを評し、動きが足らないコスタをベンチに置いて「偽9番」役を任せたトッテナム戦では「驚異的なパフォーマンス」と絶賛していた。

 だが、ムチを持つ手も止まらなかった。アーセナル戦10日後に行われたCL戦をアザールはベンチで迎えている。10月後半には監督への直談判が受け入れられ、リーグカップ戦で普段の2列目左サイドではなくトップ下で起用されたが、それも続くリバプール戦(1-3)での60分間弱で終了。直後のCL戦では再びベンチ降格を味わった。指揮官が公言した理由は、やはり「守備面の問題」だった。

アンリが感じた選手が「やりたくないサッカー」。

 自身もチームも調子が上がらず、タイトル防衛という目標も失い、結果としてスタイルよりもポイントの重要性が高まる中で「守れ!」と繰り返しムチを入れられたところで、「10番」のモチベーションが上がらなくても不思議ではない。

 11月を迎えた当時のチェルシーを、現解説者のティエリー・アンリは、アザールを例に挙げて「やりたくないサッカーをやらされているように思える」と評していた。そして、モウリーニョ率いるチェルシーの最後の姿をピッチレベルで目の当たりにした、レスターの岡崎慎司も試合後に同じことを言っていた。

【次ページ】 主力は、指揮官のムチに応える気力を失ってしまった。

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