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世界が注目する1.4AJスタイルズ戦!
中邑真輔は、ありのままの姿で闘う。

posted2015/12/17 15:20

 
世界が注目する1.4AJスタイルズ戦!中邑真輔は、ありのままの姿で闘う。<Number Web> photograph by Essei Hara

ドーム大会では過去3年連続でIWGPインターコンチネンタル王座戦に出ている中邑。「WWEを除けば、世界で一番のカードだと思っている」とコメントした。

text by

井上崇宏

井上崇宏Takahiro Inoue

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Essei Hara

 2015年、中邑真輔はしょっぱなでいきなり燃え尽きた。

 1月4日、東京ドームでIWGPインターコンチネンタル選手権試合として行なわれた飯伏幸太との一戦。顔面を踏みつける、口にシューズの尖端をねじ込むといった“字余り”を両者ともに繰り出しつつ、理性を失いながら、最後は必殺ボマイェで中邑が勝った。プロレスの定型に縛られない、お互いの感情の自由な律動によって成立したベストバウトだった。

「あの試合は凄まじかった。おそらく、プロレスにはさまざまな“100点”があるんでしょうが、間違いなくあるひとつの“100点”をたたき出したと思います」

 じつはこれまでのキャリアの中で、中邑は自らの試合で「100点」と実感したことがただの一度もなかった。つまり現時点で、あの飯伏戦は生涯唯一の満点ということになる。
「いや、100点超えをいったと思う」

 そして、さらなる刺激を求め続けるがゆえに、深刻なエアポケット状態に陥った。

巨大な喪失感のなか、ベルトまで失ってしまう。

 今後、自分は何をするべきなのか?

 特別な試合をやってのけてからすぐに襲ってきた喪失感は、「もうプロレスを辞めてもいいや」と思えてしまうぐらい大きなものだったが、2月に仙台で永田裕志の挑戦を受け、なんとかこれを退けると、それから気持ちを切り替えようと努めた。新たなテーマ探しに躍起になった。

 中邑真輔のプロレスとは、本来、プロレスの定型、格調を守りながら、ふとした瞬間に生まれる隙間の中に自由詩を書き込んでいくというものだ。

 春を過ぎる頃になって、「目の前でのたれ死んでいた後藤洋央紀をおちょくってみた」。案の定、後藤はその挑発に乗ってきた。後藤を相手に、飯伏戦で体感した完全自由詩のエクスタシーを抜くという作業に取りかかろうとしたのかもしれない。しかし、新たなステップツールとして利用するには、後藤はあまりにも定型詩の腕利きすぎた。インターコンチのベルトを失った。

【次ページ】 「地獄の底に落ちちゃったんなら……」

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