岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER

ラグビー日本代表GMが教える、
7人制の楽しみ方と15人制との違い。 

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岩渕健輔

岩渕健輔Kensuke Iwabuchi

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posted2015/11/27 18:20

ラグビー日本代表GMが教える、7人制の楽しみ方と15人制との違い。<Number Web> photograph by AFLO

15人制でも代表入りした藤田慶和だが、7人制には“スピード仕様”で臨んだ。

15人制と同等かそれ以上に求められる「個」。

 このような競技特性を踏まえて勝利を狙っていくためには、選手にも相応の対応が求められます。15人ではなくて、あくまでも7人で勝負の場に臨むため、個の強さは15人制のラグビーと同じか、あるいはそれ以上に求められてきますし、特に速さは決定的な要因になります。

 たとえば15人制の試合では、選手がトップスピードで走り続けるような時間帯や、40メートル以上の距離をダッシュで駆け抜けるような場面は、ほとんどありません。むしろ8割くらいのペースで走り続けるケースの方が多いのが実情です。

 対照的に7人制の試合では、攻守を問わずに、広大なスペースを一気にダッシュしていく場面が度々訪れるため、選手にはスプリント能力とフィットネス(スタミナ)を高めていくことが必然的に求められます。

15人制仕様から5kg減量した藤田選手。

 7人制においていかにスプリント能力やフィットネスが重要になるかは、15人制、7人制の双方で代表入りしている藤田慶和選手の例をとればわかっていただけるでしょう。藤田選手はW杯イングランド大会においても、スピードで勝負するウイングの選手として試合に出場しました。

 そしてイングランド大会から10月13日に帰国した後、11月7、8日に香港での7人制リオ五輪予選に臨むまでの間に、実に5キロほどの減量を行っています。理由の一つはスピードをさらに増すためです。藤田選手は15人制の日本代表の中では足の速い方ですが、それほどの選手でも減量をして体を作り変えなければならないのが、7人制ラグビーという競技なのです。

 海外に目を転じると、このような傾向はさらに顕著になります。昨シーズンのワールドシリーズ、最終戦のイングランド大会で、アメリカが優勝を果たしたことは先に述べ通りですが、チームが躍進する原動力となったのは、カーリン・アイルズという陸上競技出身の選手でした。

 アイルズ選手は、全米陸上界で上位40番内に入るようなスプリンターで、100メートルでは10秒1台の記録を持っています。仮に日本に生まれていたならば、当然、陸上短距離の分野で、リオ五輪の有力メンバーに名を連ねていたでしょう。言葉を変えれば。日本の男子7人制代表のメンバーは、このような猛者と凌ぎを削っていかなければならないのです。

【次ページ】 1日3試合を2日連続でこなす精神的負担。

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