グーパンチをすべて受けきったオカダの意地。

　はたして、その試し合いは、天龍はオカダのドロップキックを喰らい続けることで、そしてフィニッシュのレインメーカーを受け切ったことで自身の信念である“痛みの伝わるプロレス”を体現し、オカダはほぼドロップキック1本で試合を作り、ハードディスクの容量の底知れなさを知らしめたことにより、屈指の名試合となった。試合を終えた5日後の11月20日、オカダに話を聞くことができた。

「まず、『ボクと同じ時代じゃなくてよかった』云々の件に関しては、対戦が決まってからは極力言わないようにしていました。というのは、自分のなかではそういう（遺恨や因縁めいた）闘いをしたかったわけじゃないというか、あくまでリング上で魅せたいというのがあったんで」

　額にはまだ天龍に蹴られたことにより、赤く腫れた傷痕が数カ所残っていた。だが、自身が投げた豪速球を打ち返された憶えはない。

「結局、最後までボクがずっと豪速球を投げ続けたような感じで、天龍さんもなんとかバットに当てた。当てたけど球は前には飛ばなかったという感じですよね。グーパンチをもらっても絶対に引く気がなかったですから。そりゃ効きましたけど、意地でも引かない、天龍さんが疲れちゃうぐらい喰らってやろうと思ってました」

「プロレスって何も変わってないんですよ」

「それとあの日は天龍さんをずっと応援してきた世代のお客さんが多かったと思うんで、そういう人たちに今のプロレスの凄さを見せたかった。だからこそグーパンチを全部もらったんです。『今のプロレスって、顔面を殴ったり蹴ったりする人いないでしょ』って言われても、べつにこっちはいつでも喰らいますよっていう気持ちはあったし、（中邑真輔の）ボマィエや（棚橋弘至の）スリングブレイドを喰らうほうがよっぽど嫌だっていうのはありましたから。そういう意味でも、結局、プロレスって何も変わってないんですよ。そこのメッセージもあの試合に入れたかった」

　意外にも戦前と変わらぬテンション、舌鋒の鋭さで、オカダは天龍戦を振り返った。

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