Number Do ExBACK NUMBER

マラソン世界新記録
2時間2分22秒が出る日は遠くない。 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

PROFILE

photograph byAFLO

posted2015/11/12 10:00

マラソン世界新記録2時間2分22秒が出る日は遠くない。<Number Web> photograph by AFLO

ケニアのデニス・キメットは、2014年のベルリン・マラソンに出場し、2時間2分57秒の世界記録を樹立。この記録はいつ破られるのだろうか。

世界記録を出した経験のある選手が、現役に3人いる。

 よく知られているように、男子100mと200mは、過去10年間でそれぞれ2回ずつ世界記録が出ているが、記録したのはいずれもウサイン・ボルト(ジャマイカ)、歴史的にも突出した1人の選手だ。女子の棒高跳も10年間で何度も世界記録は更新されたが、すべてエレーナ・イシンバエワ(ロシア)の記録。この2人は、ともに'09年に自己ベストを記録しており、ボルトの100m9秒58、200m19秒19、イシンバエワの5m06は、当分破られそうにない記録になっている。

 だが男子マラソンは、'08年に「皇帝」と呼ばれたハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)が史上初の2時間3分台に突入し、'11年にパトリック・マカウ・ムスヨキ(ケニア)、'13年にはウィルソン・キプサング・キプロティチ(ケニア)が続く。そして'14年には、デニス・キプルト・キメット(ケニア)が史上初の2時間2分台を記録している。ゲブレシラシエを除く3人は、いずれもまだ現役選手だ。世界記録を出した経験のある選手が、現役に3人もいるという状況なのである。

 10年前の'05年、世界記録はポール・テルガト(ケニア)の2時間4分55秒だった。現在は2時間2分57秒と、この10年間で約2分短縮されている。だが、'14年にキメットによって記録された現在の世界記録も、現役選手たちにとって、更新可能なタイムではないか、と考えられる。それは、ラップタイムを詳しく見ていくことで、ある程度客観的に証明できることなのである。

30km以降で大幅なペースアップ。

 キメットが'14年9月28日のベルリンマラソンで出した、2時間2分57秒という世界記録は、5kmごとにラップを見ていくと、別表のようになっている。30kmまでは14分26秒から14分46秒。平均すると、5kmあたり約14分36秒のペースで走っている。

 ところが30kmから35kmの5kmが、14分09秒と大幅にペースアップしているのである。30kmからペースアップした理由は、ペースメーカーが外れて、先頭を競う5選手の勝負が、ここから始まったことだと思われる。詳しく見ていくと、25kmから30kmは14分30秒(1km平均2分54秒)だったのが、30kmから35kmは14分09秒(1km平均2分50秒)へとペースアップしているのである。

 そして35kmから40kmは14分42秒(1km平均2分56秒)、40kmからゴールまでは1km平均2分57秒と、終盤は、レース序盤とほぼ同等のペースで走っている。

【次ページ】 キメットの世界記録は十分に更新可能。

BACK 1 2 3 NEXT
デニス・キメット
リオデジャネイロ五輪
オリンピック・パラリンピック

陸上の前後の記事

ページトップ