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オールブラックス、心理戦略の妙。
史上初W杯2連覇を達成できた理由。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byAFLO
posted2015/11/02 16:30
史上初のW杯2連覇を果たしたニュージーランド代表・オールブラックスによるマオリ族の伝統舞踊“ハカ”。1905年以来、試合前に演じられている。
「なんとなく」試合に入ることは絶対にしない。
さらにハーフタイム。オールブラックスは相手よりも早くピッチに姿を現すと、日本でいう「ランパス」などのウォームアップを改めて行う。選手と選手が互いの胸をぶつけて、これから始まる残り40分に向けて心身を盛り上げる。過去のW杯では見られなかった行動だ。そこまでしておいて、後半のキックオフに向けて相手ピッチに姿を現すと、もう一度円陣を組んで、相手のリズムを崩すのだ。どこまでも謙虚な国民性は、勝利のためならどんな小さなことにも徹底して取り組むという周到な準備を可能にさせた。
同じ行動は準決勝、決勝でも繰り返された。オールブラックスは、すべての試合で圧倒的に有利と言われていたが、トーナメントのすべての試合で相手を警戒し、自分たちのリズムで試合に入るための「ルーティン」を自らに課した。絶対に緩まない。相手を軽視しない。「なんとなく」試合に入ることは絶対にしない。
オールブラックスが連覇を成し遂げた勝因はたくさんある。技術の裏付け、選手の育成環境と経験の蓄積、判断の共有化……世界一のチームになった理由はたくさんある。だがそんなチームでも敗れたことは歴史にいくらでもある。世界一をかけた最高の大会の最後の試合で「勝った」大きな要因は、「決して緩まなかった」ことにあった。